地域で起業するときに大切なことは? SBラボ&個別相談企画「俺の起業!」開催レポート
なんのために働いているのか?自分の仕事の意味とは?そんなことを考えたことはありませんか。9/11に開催したSBセミナー「俺の起業!」 では、そんな疑問を抱き自らキャリアを大きく変えた講師をお呼びし、地域で働くこと、自ら仕事を創りだす事について伺いました。
事業をする無垢な想いと、事業計画という冷静さを備える大切さ。
【第1部】セミナー「俺の起業!」:楽しい人生だった!として満足して最後を迎えたい
第1部ではくるまるしぇカンパニー代表の奥住さんに、起業当初から現在までの起業の流れや、その中であった紆余曲折を伺いました。くるまるしぇカンパニー代表の奥住さんが起業した理由は、シンプルに「楽しい人生だった!として満足して最後を迎えたい」と思ったため。一般の企業で働いていたこともありましたが、寝る間も惜しんで働く自分に疑問を持ち、起業するという決断に至ったそうです。
最初に始めたたこ焼き屋は、事業が軌道に乗り始めるまでは、お菓子とバナナ、水で腹を膨らませる日々もありました。その後、試行錯誤や人の縁のなかで、無事軌道にのり売上げも十分に出るようになったところで、まさかの東日本大震災に。この時は出店ができなくなり、収入が一時期ゼロになってしまったそうです。
このことから、事業を1つに絞らず、いくつかの事業を並行して実施していく大切さに気が付いたそうです。その時ちょうど農業と空き屋の課題を知り、空き屋を活用した水耕栽培の事業を開始。最終的には福祉作業所に事業は売却しましたが、今まで関わることのなかった人とのつながりから、新しい世界を知ることができました。と語る奥住さん。
現在はキッチンカーを改良した高齢者施設をめぐる移動マルシェ、愛称「くるまるしぇ」を新たな事業として展開しています。実はこの事業も、ニュースで買い物難民という課題を知り、地域の議員にヒアリングしたところから生まれました。一般企業では採算が合わないニッチな市場を、自分が事業として関わることで喜んでくれる人もいる。まさに「起業=喜業」です!と奥住さん。
独立してよかったことは、「生きている!という充実感」「家族との時間を作れるようになった」、「試行錯誤する楽しさ、想いを形にできる楽しさ。」があること。逆に、独立して辛かったことは、「売り上げがゼロの時もある」、「決断するのは自分、経営者は孤独」と紹介しつつ「現在となっては、すべて笑い話。」だそうです。
最後に、起業への一歩を踏み出すために
・考えたことを実際にやってみると違うので、やりながら修正していくのが良い。
・新しく始めるときに、お金は極力かけない方がよい⇒お金をかけてしまうと損切が遅れてしまうし、たとえ初めは上手くいかなくても継続が出来る。
・起業は、自分を思い切り表現する手段として、存分に楽しむ!
・人に話す・発信する・GIVE(見返りをきたいしない)をすることで、仕事がつながっていく。
・失敗は良い方向に結び付ける→「まあ、いっか」の精神が大切!
というアドバイスで話を締めくくりました。
【第2部】リレートーク:事業への無垢なる想いと、事業計画という冷静の間で。
第2部では、プラッツのソーシャルビジネスラボ(コワーキング)のメンターでもあり、ブランディングのコンサルもしている藤田さんへ「笑顔が生まれるリブランディング」と題して、自身の「しくじり」の経験から、仕事をリブランディングするときに必要なポイントについて紹介いただきました。
また中小企業診断士の朝比奈さんからは「共感を生み出す事業計画の作り方」について伺いました。
「あなたはナゼ仕事をしていますか?」という問いかけから始まった藤田さん。今では「リブランディング」という切り口からコンサルタント事業をしていますが、初めから順風満帆だったわけではなかったそう。
起業したと時のコンセプトは「ママの笑顔は子どもを笑顔に 子どもの笑顔はママを笑顔に」。起業して1年半後に主催したイベントでは800人も集客し、地元企業35社から協賛を集めるなど、側から見ると順調に思える。しかし実際はイベントやグッツ販売の事業がなかなか大きな利益につながらず、事業2年目の売上げも目標に達するものではありませんでした。当初描いていた事業コンセプトとビジネスモデルでは、思うように利益が上がらず、コンセプトを変更することに。
本気で「自立」をするために、「やるべき仕事」を見直しながら、自身の器用貧乏というコンプレックスを逆手にとって、自分に「向いている仕事」を考え抜きました。事業のリブランディングをおこなったその結果、はじめは2時間500円だった講座が、3年で2代目社長などの事業をリブランディングするにまでになり、今では100万単位の契約を結ぶまでになりました。
ビジネスには「想い」が大切だけれども、それだけでは「ビジネス」にはならないというメッセージでお話を締めくった、藤田さん。奥住さんと重なる部分もあり、参加者もうなずきながら真剣に聞いていました。
朝比奈さんからは、「共感を生み出す事業計画の作り方」について話しを頂きました。朝比奈さんは、もともと広告や販促物のデザイン・コピーライティングをしていたところから、ソーシャルビジネスをしている企業に出会い感銘を受け、ソーシャルビジネス支援の現場へ入ったそうです。現在は、中小企業をサポートしながら、自身も横浜市でソーシャルビジネスを手がけ、子ども同士、親同士の交流を通じた地域づくりを実施しています。
事業計画を作るには、ます2点の重要なポイントを抑えてください。と朝比奈さん。
1つ目は、人は「仲間と仲間以外」の線引きをしたがる生きものであり、共通点を見出すと仲間意識が生まれるというポイントです。特に「純粋無垢なもの」を知り、助けなければならない状況に対面した時、「惻隠(そくいん)」の情を抱いてしまうそうです。
2つ目は、事業の真の価値を可視化するための「ゴールデンサークル」の重要性です。
「WHY」なぜ事業をやるのか(目的:何のためにするのか)
「HOW」どうやるのか(商品やサービスの特徴、提供方法)
「WHAT」何をするのか(具体的な商品やサービス)
を明確にしておくことの重要性について説明がされました。
この2点を把握した上で、事業計画の中に「WHY」と「純粋無垢なもの」を書き込むことで、「共感を生み出す事業計画書」を書き上げることができます。
この事業計画書ですが、調達できる資金は種類があります。大きく分けると2種類「返済が必要な資金」、「返済が不要な資金」があり、計画書の書き方には4種類(融資系・出資系・寄付系・助成金系)があります。
また融資系、助成金系の計画書を書くポイントとして
・事実ベースを記載して客観性を持たせること
・解決する課題を明確にして、可能な範囲で市場環境を調査すること
・小さくトライした結果を載せること
・ポジショニングを明確にすること
といったノウハウが紹介されました。
ではこの「戦略や計画」と、惻隠を刺激するような「純粋無垢なもの」をどのように両立し、「共感を生み出す事業計画」を書き上げていくのでしょうか。
それは、
・ 純粋無垢な気持ちのWHY(本音)を明文化する
・ WHYと適合する事業計画書の種類を選ぶ
・資金の出し手が求めているポイントにコミットするようにHOWとWHATを磨く
これによって、「純粋無垢」という原石を、計画書に落とし込む過程で、アクセサリーまで磨き上げることができ、「共感を生み出す事業計画」がうみだされるとのことでした。
ここまで奥住さん、藤田さんからは事業を始める心得、抑えるべきポイントを、朝比奈さんからは事業の拡大・継続を促進するための事業計画書作成の大切なポイントを紹介いただいたき、あっという間の2時間が終わりました。
質問タイム
朝比奈さんまでの発表が終わった後は、参加者からの質問タイムが設けられました。
Q)金額が500円から100万まであげるときの気持ちの変化はどんなものですか?
A)500円だとターゲットとは異なるお客が来るので、値段を上げていきました。値段を上げるときは、腹をくくるしかありません。もちろん500円→1000円とテストマーケティングをしながら徐々に上げていきました。
Q)東京都の助成金用の事業計画書を書いているが、今日の話にあった自分の無垢なところでなにを書けばよいのか分からないです。
A)根っこの本音か、表層の本音か、本音にも2種類あります。言語化が大切で、それができれば申請書に寄せていくことができます。東京都の助成金について、パッションの入れ処は大事で、そこが審査員の方々が応援したくなる部分です。もちろんそれだけではだめ。実績が必要です。
などなどここでは上げきれないほどの質疑応答がありました。
起業を目指すひとたちの熱い想いがあふれた本イベント。満足度の高い会となりました。今後もこのような体験談を聞きながら、交流が出来る会を開催していく予定ですので、最新情報はプラッツSNSをご確認ください。