「コミュニティカフェ地域のたまり場開設講座 開設・運営事例編2/7」開催報告
第5回も引き続き、実際にコミュニティカフェを立ち上げた事例をご紹介いただきました。
前半は「いつまでも半生(はんなま)で いつまでも未完成の場作り」をテーマに、後半は「カフェと子育て世代の社会参加」をテーマにお二人のゲストから伺いました。
「コミュニティカフェ地域のたまり場開設講座 開設・運営事例編2/7 」開催報告
「いつまでも半生はんなまで いつまでも未完成の場作り」と「カフェと子育て世代の社会参加」
第5回も前回、前々回に続き、実際にコミュニティカフェを立ち上げた事例をご紹介いただきました。
前半は「いつまでも半生で いつまでも未完成の場作り」をテーマに、株式会社シンクハピネス代表・糟谷明範さん。
後半は「カフェと子育て世代の社会参加」をテーマに、認定NPO法人こまちぷらす理事長・森祐美子さん。
お二人からお話を伺いました。
“打ち上げ花火にしない” 持続的な場づくりのために大切なこと ~「FLAT STAND」~
【きっかけは「医療への違和感」】
理学療法士として病院に勤務していた頃、院内での「ケアする側とされる側」の関係性に違和感をおぼえたという糟谷さん。その後、在宅医療に携わるようになり、家・ご近所・地域・行政との関わりの中で生まれた「医療と地域の壁をなくしたい」「自分たちでその仕組みをつくりたい」という思いから、「株式会社シンクハピネス」の設立に至りました。
現在は医療と暮らし(ライフデザイン)の2つの軸で事業をおこない、訪問看護事業所、居宅介護支援事業所、地域コミュニティ(「村づくり」)を運営しています。
開設事例として紹介される「FLAT STAND」は、カフェ事業として2016年にスタート。理学療法士であり経営者、ときには講演活動や医療者としての社会活動……と様々な顔をもつ糟谷さんも、週に1日はカフェ店員としてお店に立ちながらコミュニティの場づくりに携わってきました。
【“持続的な場”にするために大切なこと】
コミュニティの場は、はじめにドン!と盛り上がるも終わりを迎える“打ち上げ花火”ではなく、「1年後、数年後の関わり方を考えてデザインされ、続いていくことが大事」と話す糟谷さん。そのために大切なこととして「対話を重ね、時間をかけること」「自分たちが主役にならない」「暮らしの変化に合わせて少しずつ変化させ、完成しないコミュニティ」などのポイントが、自身の経験に基づく考え方とともに紹介されました。
今後も様々なコミュニティの展望がありながらも、糟谷さんの頭の中では「“みんなで一緒に”は難しい」という考えがベースにあるといいます。感覚も背景も人それぞれ。だからこそ、「どうしたら一緒にできるのかを考え、“自分の考えを押しつけないこと” “具体的な目的を明らかにしておくこと” がとても大事になる」というお話でした。
時間と空間の共有がもたらす 出会いと喜び ~「こまちカフェ」~
【自分の課題=社会の課題】
「認定NPO法人こまちぷらす」の名称の由来は、「子育てを まちの力で プラスに」。飲食や雑貨販売のほか、イベントスペースとしても活用される「こまちカフェ」を運営しています。
そこでは“見守りボランティア”と呼ばれる人たちが、来店した親子の赤ちゃんや小さなお子さんをケア。その間、お母さんは両手を存分に使って、ゆっくりと味わいながら温かい食事をとることができます。そんな当たり前のことができなくなる状況が、子育て中にはあるのです。
自身も2児の母である森さんは14年前、初めての子育てで言葉にならない孤立感を経験しました。当時はコミュニティとの接点がなかったそうですが、のちに関わったボランティア活動を通して「子育ての孤立は自分だけの課題ではなく、多くの人が抱える問題」と気づきます。そして「この環境を自分の子供たちの世代には引き継ぎたくない」という思いが原点となり、団体の立ち上げと見守りつきカフェの開設につながりました。
【苦難から得られた気づきを活かして】
現在約50人のスタッフと180人のボランティアメンバーが参加し、年間12000人の来店、全国各地や海外からの視察など、順風満帆に見えるこまちカフェ。しかしそこに至るまでには、“場づくり”の難しさに直面する出来事がいくつもありました。森さんは今回、立ち上げから店舗運営の実務的な内容とともに、移転の失敗や組織の危機など「失敗」の経験についても詳しく語ってくれました。
今では様々な困難を越えて得られた気づきから、「自分が“こういう場をつくりたい” ときちんと発信すること」「そのビジョンと一人ひとりの仕事が“つながっている”と実感できる工夫」を大切にしている森さん。そのための具体策として、月に1回のミーティング開催や、働くスタッフの映像にメンバーの思いや感謝のメッセージをのせたムービー作成が紹介されました。
お話の最後には「たくさんの苦労の連続。それでも、その倍以上の喜びや楽しさがあってやめられない。カフェには毎日、奇跡のような瞬間があるなと思います」と笑顔で語る森さんの言葉があり、参加者の背中を押してくれるようでした。
第5回を振り返って
登壇されたお二人のお話には、互いにリンクする部分がいくつもありました。特に共通して感じたのが、“想像すること”の大切さです。紹介された事業はどれも、自分の考えで決めつけずに、どうしたら相手が喜ぶか、居心地よくいられるか、あるいはそこに入れない人の状況を、想像してみることから始まっていたように思います。
人が“場”を好きになるのは、そんな空気を感じられたときなのかもしれないと感じました。
講座の最後には糟谷さんと森さんがやりとりされる場面があり、「“誰かのため”だけでは続かない。“自分が好きだから、自分自身のために”、という感覚も大事に」という共通のメッセージで講座は締めくくられました。
次回は2月21日(日)、「コミュニティカフェの経営に必要なもの」をテーマに、堀内会計事務所代表・税理士の堀内龍文さんよりお話を伺います。
(市民ライター 伊藤 薫)