「コミュニティカフェ地域のたまり場開設講座 開設・運営事例編1/24 」開催報告
全8回シリーズ「コミュニティカフェ・地域のたまり場開設講座」がスタートしました。コロナ禍で様々な取り組みが中止にされている中、このような時期だからこそ、人と人とのつながりや助け合いの必要性が高まっており、「居場所」作りに期待が寄せられています。
コミュニティカフェ開設講座
~第3日目開催レポート~
第3日目は、「地域・介護・保育」に関連した開設・運営事例の紹介です。
前半は「本人・介護家族と地域をつなぐカフェ」をテーマに、千葉県柏市の「ケアラーズカフェ みちくさ亭」の布川佐登美さん。認知症高齢者とそのケアラー(無償で介護を担う家族のこと)を中心に、誰でも利用でき、利用者は市内全域から全国にわたります。
後半は、「多世代・共生の居場所とつながり」をテーマに、小金井市の「地域の寄り合い所 また明日」代表理事の森田眞希さん。一つの場所で、地域の開放スペース・認知症デイービス・認可及び認可外保育園の4事業を展開。子どもと高齢者、地域の人が一緒に過ごし、地域全体で支え合う場所です。
お二人から、開設と運営の実際について教えていただきました。
自分が歳をとっても安心して暮らしていたい〜「みちくさ亭」
人の目を気にせず、話を聴いてもらえる場所
布川さんは、認知症の実母の遠距離介護で、介護うつになった経験から、「助言ではなく、寄り添って話を聴いてほしい」という思いで、2013年に柏市のお母様の家でカフェを開設しました。ケアラーをケアする場所だけれども、家族会という当事者だけの限定的な形にしたくはない。「かつて母親の家には毎日、近所の人がよく来ていて賑やかだった」。そんなイメージを描き、5ヶ月で開店に至りました。
自分らしく生活を楽しんでいただけるように
開店までには多くの偶然と入念な準備がありました。協力者を得て、保健所の申請に向けた改装、地域のリサーチによるニーズの把握、市の助成金を利用しチラシなどによる広報への注力、月間売上や利益率の計算。3期目と8期目の収支報告も実際に見せていただき、現在は黒字経営だそうです。コロナ禍で始めた見守りも兼ねた、宅配お弁当の利用も増えています。カフェでは、利用者同士のおしゃべりに始まり、ニーズに合わせた勉強会や、ボランティアの専門職による相談など多岐に渡った活動が行われています。また認知症の利用者自身が、得意なことを生かして働く姿もあります。
ケアラーズカフェの果たす役割
現在「みちくさ亭」は、柏市の認知症カフェや居場所事業のモデルにもなっています。超高齢社会の現在、要介護者に対してのケアラーの人数は少なく、その背景は多様で、中には学生もいます。抱える苦悩も様々ですが、彼らを公的に支援する仕組みはなく、市民による取り組みが中心で、ケアラーズカフェも全国にまだ30箇所ほどしかないそうです。近年、大学との共同活動もあり、果たす役割の可能性は広がっています。
共に生きること、地域全体がコミュニティカフェ〜「また明日」
壁を、「ぶち抜く」
「『ばあば』と呼びベッドに潜り込む子どもをギュウッと抱きしめるお年寄り。彼らは“障害児”“寝たきり老人”と呼ばれているが、そう決めつけているのは自分だった」。森田さんは、病院の保育士時代にそう気がつかされ、「年齢・性別・国籍などを超えてつながれる場所」を作りたいと、夫とともに2006年、「また明日」を始めました。「行政の縦割りの壁もぶち抜きたい」。そんな思いも込め、アパート1階部分の壁を全て取り払い、一つの空間にしました。
共に生きるということ
つかまり立ちしたばかりの子どもが、そばに立つお年寄りに椅子を勧め、お年寄りはその子どもの手を支えている。そんな光景がここにはあります。赤ちゃんからお年寄り、そして犬まで共に賑やかに過ごす様子は、まさに大家族のよう。「子どもたちに生きていくこと、あるがままに見せたかった」と森田さんは話しました。
一つの空間で4事業を展開するためには、様々な法的基準をクリアする必要があり、また運営維持のため多くの人手が必要でした。そこには、地域の人の大きな支えがありました。
多様であることで、喜びも重層的になっていく
森田さんはアパートの2階部分に住み、町内会や商店街の人たちと人脈を築きます。今では「『また明日』は、俺のおかげでできた」と語る地域の人が多いそうです。近年、高齢出産で育児と介護を両立する人も増えていますが、ここでは垣根なく安心して預けられます。「線引きすると、その隙間に落ちてしまう人がいる。そういう人を救いたかった」。そんな森田さんの思いは、2018年の法改正による「共生型サービス」の普及も追い風となっています。今後もますますニーズが増えると思われます。
第3日目を通しての学び
“密”になりやすい介護や保育。感染対策についての質問がありました。保健所の許可が必要な事業の場合は、指導に従い設備を整えること、そして利用者(家族)と話し合い、双方合意の上で創意工夫することが大切と学びました。
お二人とも、ご自身の経験から思いを形にされ、その思いは運営理念に通じています。ライフイベントや時勢もめまぐるしく変わる昨今。けれどここには変わらない温かな思いとゆったり流れる時間がある、そんなことを感じました。
次回は、第4日目2021年1月31日(日)13時20分から16時40分多世代交流型住み開きカフェを運営されている、「café ハートフル・ポート」の五味真紀さんから開設・運営事例をご紹介いただきます。
(市民ライター 亀谷のりこ)