「ギフトでつながるありがとうの輪」シンポジウム 第1部開催報告
誕生日、クリスマス……。プレゼントをもらえる時は、楽しみで眠れなかった思い出がある方も多いのではないでしょうか。2020年度の第9回市民協働推進シンポジウムでは、コロナ禍の大変な時期だからこそ、次の世代に向けたギフトを考えてみようというテーマでイベントを開催しました。
1部:基調講演「子どもたちを笑顔に!この冬あなたも『誰かのサンタクロース』になりませんか?」
2部:ワークショップ「府中でギフトをたくらむ会議」
という構成で、1部ではNPO法人チャリティーサンタから活動の紹介と協働事例の紹介を頂き、続く2部のワークショップでは、府中でネットワークを活かしながら活動している「FC東京」「府中deボッチャ」「フードバンク府中」の3団体とともに、参加者の想う次の世代に向けたギフトについて話しました。
※当日の様子はYouTubeからもご覧頂けます。
再生リスト一覧
https://youtube.com/playlist?list=PLMyoXf7LSmHCbffIz6nwgzxj4LA5Z9x31
誰でもサンタになれるチャリティーサンタ。
「あなたも誰かのサンタクロース」をキャッチフレーズに全国で活動を展開するチャリティーサンタは2008年に始まりました。
チャリティーサンタの基本的な活動は、プレゼントをサンタに届けてもらいたい家庭を事前に募集して、クリスマスイブの夜、その家にプレゼントを届けに行くという内容です。そして届けた家庭からチャリティー(寄付金)をもらって、そのお金で困難な状況にある子ども達の支援を行っています。
活動当初は途上国の子ども達へ支援を行っていたそうですが、東日本大震災などをきっかけに日本の子どもたちへ支援をするようになってきました。プレゼントを届けることを目的としているのではなく、子ども自身が愛されているのだという想いを心に刻んでもらうことを大切にしています。子ども達へ特別な思い出をあまねく届けるために形を変えながら活動を継続しているそうです。
「団体としてのミッションは『子ども達に、愛された記憶を残すこと』。ビジョンは『子どものために大人が手を取り合う社会』です。」と語る清輔さんは、「このミッション、ビジョンも何年かごとにブラッシュアップしています」といいます。「保護者とは違う存在に愛された記憶は、つらいと思った時、大変な時に、心の支え・励みになるはず。数字には表すことはできませんが、背中を押す存在になると信じて活動しています」と話していました。
高校3年生のヒッチハイクから始まった『ご縁』
チャリティーサンタの活動の始まりは、代表の清輔夏輝さんが高校を卒業して、大学入学までの春休みに一人でいったヒッチハイクにあるそうです。その頃は福岡で暮らしていた清輔さんですが、四国までヒッチハイクで旅をしようと思い立ち、通帳とスケッチブック、地図をもって出発。
フェリーに乗り遅れるというまさかのアクシデントもありつつ無事に四国に到着したのち、道路に立つ前にトラック運転手の男性に声を掛けてもらい、初のヒッチハイクが成功したそうです。このおじさんから始まった偶然がどんどん繋がっていき、当初の予定とは違う道、違うスケジュールで四国を一周しつつも、多くの人たちとの出会いに恵まれ旅を終えました。
「ご縁というのは、人脈ではなく、神様からのギフトではないかと感じた。」そう話す清輔さんは、その後「ご縁は大切にしよう!」と考え、20代前半に人知れず、スケジュールが許す限り誘われたら断らないキャンペーンを行っていたそうです。そしてなんと、そのキャンペーンの中で出会った女性と一緒にチャリティーサンタを始めることになりました。
その方は、休職して世界一周したあと、途上国の子ども達に向けて何かをしたいと考えていたタイミングでした。二人でアイディアを練る中で、日本の子ども達へサンタで特別な思い出を、そのサンタ活動から生まれたチャリティーを途上国の子ども達のために活用する、というサイクルを思いついたそうです。
自分自身がはじめに思い描いていた道とは異なりますが、それでもご縁を信じてYESと言ったことからご縁が繋がっていく。ご縁が招いた幸運によってチャリティーサンタの活動は生まれました。
クリスマスを子ども達のかけがえのない思い出にするために。
クリスマスイブ当日の活動について話をしてくださったのは、スタッフの「いそじ」こと、磯嶋さんです。磯嶋さんは、活動の理念に共感して2019年のクリスマスから活動に加わりました。
サンタに扮するスタッフは事前に募集して、研修をおこないます。家に伺った時は、子ども達が一年頑張ったこと、応援してほしいことをサンタからのメッセージとして伝えて、クリスマスを特別な日になるようにしています。
始めは、普段子どもとコミュニケーションをとる機会もないのでサンタとしてちゃんと演じられるか、他のボランティアと仲良くやれるか心配だったそうですが、「講習会や同じ目標を持って集まったスタッフとの交流を通して、問題なく思い出を届けることができました」と磯嶋さんは話していました。
活動中、子どもから逆に手紙とプレゼントをもらうことや、「またサンタに会いたいから一年頑張る!」という言葉をもらい、活動終了後は、「参加してよかったなという気持ちでいっぱいになりました。仕事で辛いことを経験したから感じることかもしれないが、小さい子に負けず頑張ろうという元気をもらいました」ということでした。
活動の転機
NPO法人化した2014年のクリスマスで、プレゼントを届けた子どもの人数が1万人に到達したチャリティーサンタ。
その時ちょうど参加していた経営に関する研修で、講師から言われた「団体としては1万人が10万人になることを目指しているの?それが団体のやりたいことなの?」というコメントが活動に転機をもたらしました。
当時チャリティーサンタでは、プレゼントを届けた家庭への簡単なアンケートは取っていましたが、それ以上の詳細な調査は行っておらず、プレゼントを届けていた家の家族構成や子どもの状態など、すべては把握できていなかったそうです。そこで、300件ほど調査して分かったことは、サンタに来てほしいと依頼してくれるのは、経済的に豊かな家庭が多く、世帯年収が1000万円を超える家庭が25%にもなり、逆に200万円未満の家庭がたった2パーセントだったということが分かりました。
「今の活動をそのまま続けていくと、豊かな家庭ばかりにプレゼントが届くという仕組みだったと気づかされた」と清輔さんは説明します。「それ自体は悪いことではないですが、年収が低い家庭の子どもたちにもクリスマスの思い出を届けることができるよう、もっと意識的に活動をしなければならないことがわかりました」。具体的にどうしたらよいのかを探るために、厳しい環境にある家庭へ向けて追加でインタビューを行ったそうです。
そのなかで分かってきたことは、このような家庭はチャリティーサンタの活動を知るすべが少ないということでした。また、インタビューをした中で明確になったのは「特別な思い出」というキーワードでした。母子家庭や、一人親だったりと、経済的・時間的な面で夏休みに旅行にも行けず、クリスマスぐらいは何とかしたいという思いをもった親が多かったということです。
子育て家庭にとってクリスマスが一年のうちでとても大切なイベントの一つとなっていることから、経済状況によるクリスマス格差が、特別な思い出不足に直結していることがわかってきました。
そこでその問題を解決するためにチャリティーサンタでは、ルドルフ基金を2015年に立ち上げました。プレゼントを届けた際にもらう寄付金等を原資として、厳しい環境にある子ども達へのプレゼントの購入費や、無償訪問のための運営準備費の他、クリスマス時期以外にも長期休みの間の体験活動の企画運営費など「特別な思い出」を届ける活動に活用しています。
ブックサンタの協働も意外なご縁から
チャリティーサンタでは、ブックサンタという取り組みも実施しています。自分もサンタになりたいと思った人が、協力店である書店やインターネットを経由して絵本を購入して、それをチャリティーサンタが子ども達へ届けるという活動です。本を選ぶという行為が、相手のことを想う時間とセットになり、寄付がより楽しくなる仕組みです。
この活動も実は「とある取り組みで、ネパールの山奥の村に行ったときに出会った青年海外協力隊とのご縁から生み出された活動なんです」と清輔さん。その方が帰国後、日本出版販売株式会社という出版流通を担う会社で働いたことから、偶然生まれた話しが、現在協働の形で取組んでいる「ブックサンタ」だったそうです。本の流通を管理する会社が協力することで実現できました。
日本出版販売の営業の力やクラウドファンディングにより、初年度の2017年は1000冊、2019年は6000冊と成長しています。いまでは書店からの協力も得られ2020年には36都道府県307店舗が協力してくれました。
また、アンデルセン(ベーカリー)では寄付つきの商品販売や、ロクシタンではハッシュタグをつけて投稿された数だけ、プレゼントを寄付するキャンペーンが実施されたそうです。
清輔さんは、協働は「よし!協働しよう!!」という話しではないと語ります。「活動の場があって、その中で偶然のつながり、ご縁の中で一緒に行う活動が生まれたりするものだと思います。お互いに利益を上げるために行っているわけではないので、信頼関係や人との縁を大切にしながら進めていくことが大事なのではないでしょうか」。
1部を終えて
経済的に恵まれない方に届けるために、どのような手法をとっているかという質問がありました。社会福祉協議会や行政、フードバンク協議会といった貧困家庭と繋がりのある組織と連携してチラシを届けてもうといった工夫や、インターネットを活用してのリスティング広報、また生命保険会社との連携など様々な試行錯誤をしているそうです。
『子ども達に、愛された記憶を残す』というミッションを実現するために、色々な組織との協働の形を生み出していくNPO法人チャリティーサンタ。組織としての想いを明確にすることで集まる共感と、それを活動につなげていく柔軟な取組みはとても学ぶことが多いと感じました。まだまだ活動の輪が広がっていくチャリティーサンタの活動から目が離せませんね。
NPO法人チャリティーサンタの活動はこちらからご覧ください。
https://www.charity-santa.com/
※当日の様子はYouTubeからもご覧頂けます。
再生リスト一覧
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※第2部「府中でギフトをたくらむ会議」の報告はこちらをご覧ください