「第10回コミュニティカフェ全国交流会」が3月21日に開催されました
地域の人が集まって、高齢者、障害者や子育ての支援、まちづくりなどに取り組む場である「コミュニティカフェ」。全国のコミュニティカフェの情報交流とゆるやかなネットワークづくりのために、コミュニティカフェの運営者、利用者、研究者、学生、行政・社協関係者、これから始めたい方などが集まり、コミュニティカフェの運営や課題について語り合う交流会が開催されました。
今だからこそ、必要とされるコミュニティカフェ
せわしない日々の中で、あなたには、行くと「ほっとできる場所」がありますか?コミュニティカフェは、人と人が交差する自由な空間の中で、あらゆる情報が交差し、友達ができ、さらにはもっと素敵な生き方にチャレンジするきっかけもできます。近所の人の顔がわからない、いざという時に助けてくれる人がいない。そんな希薄な人間関係に陥りやすい昨今、コロナ禍でその傾向は加速しています。人は一人で生きられない。だからこそ、人と人がつながることを大切にするコミュニティカフェの存在が求められています。
本イベントは、府中市市民活動センタープラッツと公益社団法人長寿社会文化協会(WAC)の共催で実施されました。昨年度は新型コロナの影響により中止となりましたが、今年はオンラインZoomで開催。3部構成の充実した内容となりました。
※(令和3年5月21日追記)
この回のゲスト加藤愛理子さんが運営する一般社団法人Ponteとやま発行の、「みやの森通信」第11号の中で、港南台タウンカフェ(横浜市)の齋藤保さんと対談した様子などを掲載して下さいました。
記事は、下記のリンクの4ページ目をご覧ください。
https://bit.ly/3xU7oCj
第1部 対談「地域で育まれるコミュニティカフェの可能性」
港南台タウンカフェの齋藤保さんと、みやの森カフェの加藤愛理子さんが「地域で育まれるコミュニティカフェの可能性」をテーマに対談されました。港南台タウンカフェは、「小箱ショップ」と呼ばれる、ハンドメイドの作品を売るレンタルスペースが壁際にあり、地域交流の場となっています。みやの森カフェは、加藤さん曰く「発達にでこぼこのある」子どもたちの居場所づくりを主として活動しています。これからコミュニティカフェを始める方に向けて、先輩として思いや経験を語ってくださいました。
他所者(よそもの)だからこそ、できたこと
お二人の共通点は「他所者(よそもの)」であったこと。地元ではない土地でカフェを始めるにあたり、加藤さんは「諦めからスタート」したことで、肩に力が入らず続けることができ、今では近所の人も来てくれるようになったそう。
齋藤さんは当初、「新参者が何を始めるのか」という雰囲気の中、当時の商店街会長が力になってくれ、15年続けています。
お二人とも「コミュニティカフェの存在や自分自身を理解してもらうための努力が大切」と話しました。また行政と協働する場合には「後付け」がキーワードだそうです。初めからそこを目指してしまうと自由度が低くなり、利用できない人が出てくるなど「隙間」がどうしてもできてしまう。まずは出会いのご縁を大切にして、自分たちの理念に賛同してくれる人を「一本釣り」し、人とのつながりを自然体で広げていくことで、徐々に活動の幅も広がっていくそうです。いわば「三密」がミッションでもあるコミュニティカフェ。コロナ禍では、感染対策のための様々な対応や一部事業の縮小などの苦労もある一方、来店の難しい人とオンラインでつながれたり、利用者だけではなくスタッフにとってもかけがえのない場所であることに気づけたりと、コミュニティの再発見ができたそうです。
第2部「コミュニティカフェ開設講座受講生のプラン発表」
千葉、東京(府中市)で約2カ月、埼玉で約4カ月開催されていた「コミュニティカフェ開設講座」受講生のうち5名が各自のプランを発表しました。港南台タウンカフェの齋藤保さん、Cafeハートフル・ポートの五味真紀さん、税理士の堀内龍文さんが講評してくださいました。
かけがえのない「居場所づくり」を目指して
府中受講生の池田祥子さんは、自身の祖父母が暮らした集落のような「村のつながり」と比べて、都会では人は多いのに孤独を感じるそうです。アメリカの大学で研究した世代間交流を軸に、在日外国人のサポートを始め、自分も含めた様々な人の考えやアイデアが集まる場所を作りたいと考えています。講師から「専門性の強みを生かしたプランである」「ちょっとした遊びや余白を持たせ、懐を広く持つことで、一緒にやっていくリーダーとなる仲間を増やす意識を持ってはどうか」との意見がありました。
府中受講生の野村江利子さんは、働く親として中高生の子どもの教育になかなか関われないという自身の経験から、中高生が進路を考えるきっかけになる場所づくりを考えています。キャリアにつながるイベントや身近なロールモデルである大学生の学習相談などを企画しています。講師からは「利用者である中高生の主体性や自発性が持てるプログラムを地域の人と作り上げること」、「受益者負担だけでは財源が安定しない可能性があるため、企業のCSR活動に働きかけるなど視野を広げてみてはどうか」などの提案がありました。
埼玉受講生の大塚宏子さん。「いつかカフェをやりたい」という漠然とした考えが、偶然出会った福祉のNPO団体からひらめきを得て、具現化しました。空き家を活用し、障害のある人もない人も混ぜこぜになって過ごせる寛ぎの空間を提供したいそうです。講師からは「心置きなく話せる仲間とともに志を持ったコミュニティを作ること」、「地域みんなのスペースという空気感を作っていくと良いのでは」との助言がありました。
埼玉受講生の林美恵子さん。地域包括支援センターで働いていた時、高齢者の金銭的相談が増えて来たことを感じ、高齢者が有償ボランティアとして働ける場所を作りたいと考えています。例えば利用者の「やりたい」ことの実現として手作りの作品を販売することや、地域の特産野菜を使った商品を開発することを企画しています。講師からは「みんなで企画開発段階から関わってもらうといいのでは」「高齢者支援のサポートとして助成金をもらい、ローリスクでまずは始めてみてはどうか」という意見がありました。
千葉受講生の籔下敦子さん。自身のお子さんが中途精神障害となった経験から、障害により社会に適応しづらい方が社会的に自立できる場所として、「カフェ・バルコニーの家」を立ち上げて11年になります。主に障害者の就労継続支援に貢献されています。現在は2店舗あるカフェの収益を安定させたいと考えています。講師からは「受益者負担の限界があるため、課題の整理をすると解決の糸口が見えてくるのではないか」と助言がありました。
最後に堀内さんから「こういう形がコミュニティカフェという決まりきったものはない。店舗がなくてもいろんな形でできるので、出会いを大切にして、つながりを深めていってほしい」と総評がありました。
第3部「テーマ別グループ討論」
情報と交流の交差点、12の討論会
12のテーマに分かれて、参加者全員で情報共有・意見交換を行いました。
テーマとファシリテーターは以下の通りです。
(1)「高齢者と多世代の居場所」実家の茶の間・紫竹(新潟)河田珪子さん
(2)「ごちゃまぜカフェ」みやの森カフェ(富山)加藤愛理子さん
(3)「学校内居場所カフェ」Sakura Cafe(神奈川)武政祐さん
(4)「みんなで作り上げる居場所」アンカー市川(千葉)野口淳さん
(5)「子ども食堂の今とこれから」気まぐれ八百屋だんだん(東京)近藤博子さん
(6)「出会いと表現の場」(喫茶店のふりした)ココルーム(大阪)上田假奈代さん
(7)「出張認知症カフェ」Dカフェ(東京)平田容子さん
(8)「地域の支え合い拠点としてのコミカフェ」元気スタンド・ぷリズム(埼玉)小泉圭司さん
(9)「震災後の居場所カフェ」居場所ハウス(岩手)田中康裕さん
(10)「小さな投資で大きな夢を叶えるおうちカフェのつくり方」ハートフル・ポート(神奈川)五味真紀さん
(11)「障害があってもなくても一緒に過ごす」ぷかぷか(神奈川)魚住佐恵さん
(12)「コミュニティカフェの経営」堀内会計事務所(千葉)堀内龍文さん
(1)「高齢者と多世代の居場所」河田珪子さんからは「みんな、安心していていただける場所作りを大切にしていると感じた」という話や、(4)「みんなで作り上げる居場所」野口淳さんからは、コミュニティカフェの場所探しについて「どういう場所にしたいかを常に頭に入れて、街を歩き、人と関わると良い」との話がありました。
「子ども食堂の今とこれから」に参加して
私は、(5)「子ども食堂の今とこれから」に参加させていただきました。ファシリテーターの近藤さんは、副業として週末だけ始めた八百屋で、ご近所さんたちの悩みを聴いたことをきっかけに、子ども食堂を始めることになりました。今では地域の皆が「(困った時は)お互い様」で助け合う場所になっています。コロナ禍で多くの子ども食堂はフードパントリーやフードドライブ(食品の寄付)活動に切り替えていますが、近藤さんは「おばあちゃんの家」のように、いつでもふらっと寄れる場所にしていたいそうです。
参加者からは、地域の特性によって課題に差があるとの意見がありました。例えば東京都中央区の場合、貧困よりも孤食が問題となっており、「サービスを利用する人」と「サービスされる人」に分かれてしまい、サービスの使い分けに留まるのみで人と人が関わりあう余裕がないそうです。近藤さんは、「自分の地域も、最初は困っている人たちに対して“自分は関係ない”と見て見ぬ振りをしていたけれど、話を聴くと実は課題への意識を持っており、コミュニティを求めていたことがわかった。子ども食堂のように、何かきっかけがないとそのままだったかもしれない」との話がありました。
参加者交流会
これまでと、ここからと
最後は参加者同士の交流会もありました。様々な経験を積みながら歩み続けている先輩運営者たちが、スタートラインに立った新しい仲間に「自分ごと」としてアドバイスをしている姿が印象的でした。ここで培った人脈は財産であり、心強い仲間がいることで、これからの運営に向けて勇気づけられるのではないかと感じました。
様々な理由で居場所を求めている人がたくさんいることを知り、「隙間」を埋める活動はとても価値のあることだと感じました。コミュニティカフェをきっかけに、お互いに助け合える地域が増えていくといいなと思います。これまでカフェを続けてこられた方々も、そしてここから始める方皆さまも、ますますのご活躍をお祈りしております。
(市民ライター 亀谷のりこ)