第4期つなぎすと府中養成講座 第2回「多様な働き方を支える「仕組みづくり」の現場から」開催報告 5/29
“つなぎすと”とは、地域課題を解決するコーディネーターのこと。第2回は講師に非営利型株式会社Polaris取締役ファウンダーの市川望美さんを迎え、『多様な働き方を支える「仕組みづくり」の現場から』と題してお話していただきました。また、受講生の「自己分析シート」の発表や市川さんのお話を受けてのグループワークも行われました。
■自己分析シートでお互いの想いを理解する
今回は受講生が「地域で実現したいこと」「私ができること」「私ひとりではできないこと」を記入した自己分析シートの発表から始まりました。
受講生からは
「地域と気軽につながることができる場をつくりたい。場所や協力者を探すことはできるが、行政への申請や情報発信、運営方法などが分からない」
「ミドルやシニア世代をターゲットに人生後半を主体的どう生きるか考え合う場をつくりたい。ファシリテーションのスキルはあるが、地域のどこにどんなニーズがあるかを探したい」
「学びの場や読書会、中高生が何かを生み出せる場をつくりたい。企画運営や情報発信はできるが、一緒に取り組んでいけるような地域の方とのつながりがない」
などの想いが発表され、それに対する質疑応答で受講生同士の交流を図りました。
■未来のあたりまえのはたらきかたをつくる
次に、多様なはたらき方を支える仕組みづくり、文化づくりに取り組む非営利型株式会社Polarisを立ち上げた市川望美さんにお話を伺いました。
Polarisは「働きにくさ」という社会課題に向き合いながら、ワークスタイルを変えて、暮らしの中での働き方を最適化し、地域での仕事を新しく創り出すことで、誰でも望めば選べる仕事の選択肢をつくり「未来におけるあたりまえのはたらきかたをつくる」ことを目標に活動しています。
主な事業としては、バックオフィスとして事務系の仕事をチームで請け負う「セタガヤ庶務部」とサードプレイス型コミュニティとして注目されているマンションのコミュニティサロンやレンタルオフィスのラウンジなどを中心とした場の運営があります。
Polarisでは育児離職した人や専門性をもたない人たちが、スキルアップするのではなく、今ある暮らしの中で活躍できる場を創り出すことにも力を入れており、転勤を伴う方のパートナーが転居先でもリモートで仕事を続けている事例や、育児離職期間に価値をもたせた「地域情報コンシェルジュ」の仕事などが紹介されました。
Polarisの経営については、常に最適な組織の形を模索し、ひとつのスタイルに固執しない考え方やその時々でリーダーをかえていく多様なリーダーシップの在り方、対等でフラットな関係づくりの方法などを、様々な例えで分かりやすく説明していただきました。
後半には「つなぎすと」に直接関わるコミュニティについてのお話がありました。市川さんはコミュニティとしての機能も持つPolarisを、変化に適応し、普段出会わない人が出会う場として、海水と淡水が混ざり合う「汽水域」に例えています。違いを前提にコミュニケーションをとり、「あるある話」より、自分とは異なった見方や価値観を発見できる「あるんだ話」を大切に、関心をもって人とかかわることを意識的にしているそうです。コミュニティはつなげることばかりに目がいきがちですが、時には、ほどいたり、むすび直したりしながら、適切なつながりを選択できる多様な方法を提供することが重要で、Polarisではゆるやかでも主体的につながることを大切にしているそうです。
■「働く」と「はたらく」の違い
講座の最後は、市川さんの講義を聞いて受講生がそれぞれに気づいたことや疑問に感じたことをグループに分かれて話し合い発表しました。
「働くという価値観が変わった」「やりたいことを先取りしている」「集まった一人ひとりの価値を活かしていてすごい」などの感想が多数でました。
また、「Polarisの資料で「働く」と「はたらく」を使い分けている意図は何か」という鋭い質問に、市川さんは「働く」の言葉の意味を多様にしたいので「はたらく」をひらがなにして「ひらいて」いると答えていました。その他にも、創業の経緯や会議の進め方、資金の仕組み、「課題を無効化する」方法なども答えていただきました。
使い方だけでなく「言葉」そのものが持つ力を大切に考えている市川さんは「こうなりたいと思った事は先ず言ってみる。できるかできないかより、したいことを掲げてみる。そして言葉にしたことは規模が小さくてもきちんと仕事として体現させる。それが次の信用につながり価値にもなっていく」といいます。その言葉の中に、常に誰もが心地よいと感じる「はたらき方」を追求し実現していこうという姿勢が貫かれていると感じました。
次回第3回は「コーディネーターに必要なよりそう力」。NPO法人こととふラボ代表理事、東京工科大学教養学環兼任講師の佐藤宏樹さんにお話しいただきます。
(市民ライター 崎山美穂)