第5期つなぎすと府中養成講座 第3回「まちに変革を生み出す協働事例」開催報告(2022年9月11日開催)
第2回の中島先生の講義の中で”7つの習慣”というキーワードがありました。「公的成功」とは、「信頼を元手に、市民と行政が協力体制を築き、より大きな成果の達成を目指す」という言葉が印象的だったので、この言葉を手がかりに第3回の協働事例のレポートをお伝えします。
様々な事例から見た協働の成果
こどもが育つ「地域」の繋がりを生み出していく(こどもの居場所作り@府中)
1団体目は、地域で連携したこども支援の仕組み作りをしている、こどもの居場所作り@府中さんです。2015年に有志の市民で、こどもの食堂の活動を始め今に至ります。現在では市内の子ども食堂は11カ所となり、コロナ禍では通常の活動は中止になりましたが、多くの人たちの支援によりフードパントリーの活動を継続しています。
発表の最後に、団体の南澤さんの言葉で、「つながりを創り出すというというよりも良い関係性を結ぶことの方が重要」というメッセージがありました。まさに、こども食堂の活動は、良い関係があった上で、寄付や無償の活動が継続しているのだと感じます。
そのため、市民だけでなく、より多様な市内の企業や行政関係者など、何かしらすでに実施・実行している関係者同士が協力体制を築いていく必要があるのだろうと考えました。こども食堂という点から、今後の場の共有と広がりを感じました。
三日坊主防止アプリ「みんチャレ」の取り組み(府中市高齢者支援課)
2団体目は、府中市高齢者支援課です。高齢者支援課では、エーテンラボ株式会社と協働した事業を紹介されました。コロナ禍となり活動量の減った高齢者が多い中で、少しでもQOL(生活の質)の向上をめざすために、携帯アプリを活用して主体的に取り組めるフレイル予防事業をしています。
アプリは「三日坊主防止アプリ みんチャレ」というもので、「同じ目標を持った仲間同士が5人1組で集まり、その日歩いた歩数を報告しあう」というシンプルな内容です。コロナ禍の人と会いにくい場面でも、スマホを使って仲間とウォーキングを共有できるといった声や、外に行こうという意識づけになったという声があるそうです。歩くことによってコインがたまるという特典もあるそう。また、コインを使って、府中市の食料に困窮する大学生へ食糧支援の寄付も行え、自分の健康づくりが若者の役に立つというつながりもモチベーションアップにつながっています。
事業の実施にあたっては、エーテンラボ株式会社だけでなく、介護予防推進センターや地域包括支援センター、市民活動センタープラッツ、社会福祉協議会、市内の学生団体など、多様な組織・団体とも連携しています。また、高齢者同士で主体的にフレイル予防に取り組んでいただくために、「みんチャレ」の使い方をお伝えする講座も実施。関係する組織間で毎月最低一回以上の定例会議を行い、開催状況の報告と改善提案を行うなど、連帯感を持って実施されているのが印象的でした。
活動を伺って、府中の高齢者向けICTが当事者に、今後広く受け入れられるか?という懸念を抱きました。コインの為に歩くのが目的ではないのではないかとも思いました。始めるときはニーズがあって出発しても、横のつながりを広げていく視点は見失わないでおきたいものです。
たとえば、QOLの向上をめざすだけでなく、より積極的に高齢者には活動してもらえる方向を探っていけたらと思いました。府中市にはいきいきプラザがあり、介護予防推進センターの階下には元気な子どもたちが大勢います。きっと楽しく有意義な活動がたくさんできそうです。みんチャレが高齢者と子どもたちを繋ぐ何かになりそうです。
日野リビングラボの実践による共創の取組み(日野市企画経営課戦略係)
3団体目は、日野リビングラボさんです。行政としてどのように、複雑化していく社会課題に対応するか。その具体事例として実施していることを伺いました。2019年に産学官民の対話型プラットフォームとして開始した日野リビングラボでは、2つのコラボを目指しているそうです。
1つ目のコラボは企業の目線からの「事業構造を探る場」です。直接市民の声を聴き、市民とともに試作することで、本当に必要とされている社会像、またサービスを生み出す場です。また2つ目は市民視点で「関わりしろ・共有知を生み出す場」とのこと。開発を通して、市民がアイディアや自身の経験をシェアすることで、自覚していなかった視点や知識を学び合う場にする。という内容でした。これらの活動を通して、現在では、民間学習塾と市民のコラボ事業や、ファミリー・サポート・センター事業の新しい挑戦が始まっているそうです。
まず、まちの将来を考える空間を官民学の協働リビングラボとしてとらえ、そこで生まれた新たなサービス・価値をどのように広げられるのか。日野市だけにとどまらず、多摩地域にまで及ぶ構想となり、多くの協働が生まれることを期待しています。
講座を終えて
私が講座を受講した何年も前と比べるとICT化は進み、社会の情勢や必要とされている「つなぎすと」としての技術も多様になったのかなと感じました。つなぎすとの活躍する場面も多種多様になってきていることを実感し、また一から学びたくなりました。
つなぎすと府中養成講座サポーター 進藤美津江