入門講座「府中トコロジスト養成講座」イベントレポート(5)
箱田敦只さんを講師に迎え、府中のトコロジストになるための歩き方などを全5回の講座で学ぶ市民活動入門講座「府中トコロジスト養成講座」。
最終回は、府中の森公園でのフィールドワーク。「生き物地図」を作成し、成果をまとめます。
生き物地図を作ろう
はじめての生き物地図
府中の森公園サービスセンター前に集合し、オリエンテーションと記念撮影のあと、早速園内を移動してフィールドワーク開始です。
府中の森公園は、週末ということもあり多くの人でにぎわっていました。この中で何を観察するのだろうと、皆さんわくわくしながら箱田さんの後をついて歩きます。
「あ、ありました。」箱田さんの指さすほうを見ると、植木の根元に見慣れない袋状のものがついています。「ジグモの巣です。今日はジグモの生き物地図を作ります。」
「なぜ」を面白がろう
対象物が分かったところで、2グループに分かれて各担当のエリアにあるジグモの巣を探して記録していきます。
巣がたくさん見つかる場所もあれば、まったく見当たらない場所もあります。
「それはなぜか。それぞれの理由を考えて、その「なぜ」を楽しんでみてください。」と箱田さん。
植え込みを覗き込み「なぜ」と各自問いながら、記録用紙を埋めていきます。
「ここ、いっぱいありますよ。」「ここは全然いませんね。」「これは大きいですよ。」
夢中になってジグモの巣を探す皆さんの声があちらこちらから聞こえてきました。
記録から生き物地図へ
次はフィールドワークから会議室に場所を移し、それぞれの記録を1枚の地図にまとめていく作業です。
まずはグループごとに、引き延ばした地図上にシールを使って巣のあった場所をマークしていきます。
2つのグループの地図を重ね合わせて全体を見てみると、場所によって大きな違いがあったことが分かりました。北側のエリアでは、巣が密集する場所があり、サイズの大きなものも多く見つかりました。一方の南側のエリアでは、小さな巣がほとんどで、巣自体も点在してそれほど多くはありませんでした。
生息している場所の特徴
グループごとに、「どんな場所に巣は作られるのか」「多い・少ない 差が何によるのか」意見を出し合ってまとめ、発表しました。
・枝が太すぎず、細すぎないところ(直径5~6センチ)
・湿気のあるところ
・暗いところ
・日当たりの良い植え込みの根元(根元は薄暗い)
・落ち葉が多いところ
幹の太さ、光、湿度といったポイントがみえてくる一方で、同じような項目でも真逆の見解が出たため質問や意見を出し合いました。子どもの頃にもジグモを探したことのある人の経験談や、他のグループと箱田さんの考察を受けて、活発な意見が交わされました。
生き物地図から見えてくること
生き物地図を作ることは、その場所を「人の目」だけでなく「生き物の目」で見ることにつながります。同じ場所で継続して生き物地図を作っていけば、季節による違いや経年変化にも気づくことが出来ます。それを発信することで、他の場所と比較するきっかけになったり、誰かにとっての町歩きのための情報になったりするのです。
箱田さんから新たな生き物地図を作る際の5つのポイントを教えていただきました。
(1) 旬の素材
(2) 識別が簡単な素材
(3) ある程度数のあるもの(見つけにくいと楽しくない)
(4) ありふれたものが面白い
(5) 「いない」という情報も大切に
今回のワークで出来なかったこととして、「いない」場所も同じくらいの時間をかけてみるのも大切だとアドバイスがありました。
トコロジストとして
最後に箱田さんから、自分のフィールドを決めて歩くことからはじめ、「情報に気づくこと」「情報を発信すること」が大切だと、改めて教えていただきました。特に発信に関しては、見たことをまとめることで、その場所の見方が変わり愛着が生まれ、場所への責任感につながるということでした。
これまで5回かけて実際のフィールドワークを交えてトコロジストとして学んできた皆さんは、府中でのトコロジスト活動について、講座参加前よりも具体的なイメージを持つことが出来たのではないでしょうか。
この講座への参加が、受講者の皆さんにとって活動の幅を広げるきっかけになるかも知れません。