第15回市民協働推進シンポジウム「聞く!知る!感じる!アートがつなぐ共生社会」
「聞く!知る!感じる!アートがつなぐ共生社会」を開催しました
障がいがあっても、自分らしく生きられる社会を目ざして
誰もがその人らしく、地域の人々とつながり暮らしていくことを実現するために、アートで障がいのある人と社会をつないできた先進事例を学び、府中でアートを通して人のつながりやまちの活性化に尽力されている方々と共に、誰もがその人らしく地域とつながり生活していくために、アートを通して私たちができることは何かについて語り合いました。
アートがつなぐ共生社会
6月7日(日)14:00から、府中市市民活動センタープラッツのバルトホールにて、プラッツと府中市文化生涯学習課・協働共創推進課との共催でシンポジウムを開催しました。
府中で「共生社会実現のために、アートによるどんな新たな取組みができるのか」、市民、行政、民間、企業がそれぞれ持つノウハウを共有し「協働」のアイディアを生み出す場、共に考える場とし、行動につながるきっかけを提供することを目ざしました。
午前のワークショップと午後からのシンポジウムの参加者は合わせて93人。会場と登壇者間の質問や回答などのキャッチボールも行いました。
それぞれの報告を行います。
第1部 基調講演「障がいがあっても、自分らしく生きられる社会を目ざして」
講演者:萩原 美由紀さん 社会福祉法人 アール・ド・ヴィーヴル理事長
障害がある人の「やってみたい」という気持ちを受け止め、環境を作り、背中を押すことをミッションに、就労支援B型事務所を運営し、アートを仕事にする福祉施設を作られた思いや目ざしていること、地域とのつながり、これまでの活動の中で感じてきたこと、課題、展望などについてお話しいただきました。
設立のきっかけ
当事者として、家族が声をあげなければこの子達は声をあげられないと思い、ダウン症である我が子の誕生を機に親の会を立ち上げ、ダウン症を知ってもらう取組として母たちの手記やパンフレットを作成し地域に発信し続けました。その活動を経てNPO法人設立、その後アートを仕事にする就労継続支援B型事業所「社会福祉法人 アール・ド・ヴィーヴル」を開設しました。
地域との関わり
・自主的な仕事選択と商品化:利用者が絵を描いたり接客などの仕事を選択でき、制作したアート作品は貸出(アートリース)や販売、また名刺・グッズの販売なども行い工賃へ還元しています。
・人と人との交流:アートリースの交換は制作した本人が直接持参することで企業との交流を生んだり、デパートでのギャラリー展やトークを通じ、利用者の自己表現や成長と交流を促進しています。 ギャラリーでのトークは、はじめはまったくしゃべらないアーティスト(利用者)をずっと待つことで、どんどんしゃべるようになり最初は「ありがとう」しか言えなかった人が結構トークをするようになり、とても楽しみなギャラリートークとなっています。
・企業・意識の変化(マインドチェンジ):企業の管理職の方がアール・ド・ヴィーヴルでの支援員体験などを通じて「障がい者を雇う」から「個人をどのような場所で活かすか」という考え方へ変化していきます。
・多様な連携活動:保育士養成大学との創作ワークショップや企業との連携、国際イベント(ラグビーW杯)での交流、県の広報・条例づくりへの協力などを通し、利用者と地域の交流や地域と施設の連携を多角的に展開しています。
今後の課題と提言
・インクルーシブな環境の整備:特別支援枠にとどまらず、幼少期から多様な人が身近にいる「当たり前」の環境作りが必要です。福祉施設を小・中学校の先生方の研修の場として活用することを提案したいです。その場に来て、見て、感じてもらえると、次のヒントがでてくるのではないかと思っています。
・原点への立ち返り:障がいのある人もない人も、初めてのことには緊張するし、気持ちが伝わったらもちろんうれしい。あたりまえのことですが、“障がい”というフィルターがかかると見えにくくなってしまいます。『同じ紙に絵を描く』ただそれだけのことが、人と人が関わる上での“あたりまえ”に立ち返るきっかけとなっていくのではないでしょうか。
第2部 パネルディスカッション「アートを感じる、 アートでつながるまち府中とは」
アートを通して、多様な人が出会い、つながるまちとなるために、市民・行政・民間・企業等がそれぞれのノウハウ・経験を基に連携し、どんなことができるのか、それぞれの立場で語っていただきました。
コーディネーター 宮川 亜弓さん NPO法人 アーティスト・コレクティヴ・フチュウ
パネラー 柴田まりさん アール・ブリュット立川実行委員
廣瀬 健さん 株式会社 まちづくり府中 タウンマネージャー
斎藤 麻美さん 府中市文化生涯学習課課長補佐
アドバイザー 萩原 美由紀さん 社会福祉法人 アール・ド・ヴィーヴル理事長
登壇者の皆さんから活動を含めた自己紹介
〇廣瀬 健さん(株式会社まちづくり府中 タウンマネージャー)
・ケヤキ並木でのマルシェイベント(「キテキテ府中マルシェ」)やアートパレードの開催、公共空間の活用(キッチンカーや休憩所の設置)などを通じて地域の活性化とブランド共創に取り組んでいます。
・福祉作業所と連携した蹄鉄の再販売事業や、漫画家・板垣恵介氏の作品とコラボした刑務所製品の制作など、地域資源を活かした協働を推進しています。
〇柴田 まりさん(アール・ブリュット立川実行委員)
・ボランティアでアール・ブリュット(専門教育を受けていない人が湧き上がる衝動から表現する芸術)の普及活動を展開。作品展の開催やオリジナルグッズ販売、公共施設・壁画への描画支援など、障がいのある作家の表現を地域へつなぐ活動を行っています。
・自閉症の息子(将人氏)の創作活動のエピソードや、壁画制作・コンテスト受賞などを通じた地域との関わりを紹介。
〇斎藤 麻美さん(府中市文化生涯学習課課長補佐)
・府中市の「第2次府中市文化芸術推進計画」や東京都等と連携した共生社会推進事業(YouTubeインタビュー動画「共生社会をきいてみる」、体験型ワークショップ「織物バー」など)の事例を紹介。
・文化芸術を通じて多様な人が出会い、自然にコミュニケーションが生まれる場づくりは重要です。
〇宮川 亜弓さん(コーディネーター/NPO法人 アーティスト・コレクティヴ・フチュウ ACF)
・芸術祭「地ART FUCHU」の運営や、多様なジャンル・場所での表現活動の機会提供、ラジオ形式(YouTube)の発信プログラムなどを通じた地域とアートの接続の取り組みを紹介。
〇萩原 美由紀さん(アドバイザー/社会福祉法人 アール・ド・ヴィーヴル理事長)
・他地域の事例として府中の取り組みを評価しつつ、多様な団体や福祉施設が参画するまちづくりの可能性について。
さまざまな取組についてディスカッション
(1)府中市美術館や他団体との連携・街中での出会い
・美術館・文化施設との連携: 市民が日常の中でアートに触れ合えるよう、美術館などの既存施設や公園・公共施設をいかに活用・接続していくかが議論された。
・予期せぬ出会いの場: ケヤキ並木で開催される「福祉まつり」やマルシェのように、人が行き交う日常的な空間に作品やブースを出すことで、予期せぬ交流や理解が深まる点が挙げられた。
(2)アートの発信とクリエイター支援
・作品の発掘と発信:障がいのある作家自身が応募することは難しいため、周りの人や実行委員会が作品を見出して表に出していくアプローチが重要とのこと。
・エントリー作業の負荷: 公募展等への出品に際し、施設職員や家族のエントリー作業の負担が大きいため、支援体制の整備が必要であると指摘された。
(3)画材選びと表現への姿勢
・質の良い画材の重要性:表現を制限させないため、ケチらずに良質な画材やキャンバスを提供することが作品のクオリティや本人の達成感につながる点があげられた。
(4)アーカイブ&アーティストバンク(人材データベース)
・地域アーティストの可視化:地元ゆかりの作家や作品をコレクション・アーカイブ化し、行政や企業・市民が知るきっかけを作る「プラットフォーム(人材バンク)」の必要性が提案された。
(5)作品への適切な対価(価値還元)
・対価支払いの仕組み:「障がい者の作品だから安くていい」ではなく、著作権の二次利用費や販売利益の半額を作家に還元するなど、適正価格とルールに基づいた対価の提供が大切であることが共有された。
(6)アートが持つ「つながり」の力
・先入観の払拭: アート作品そのものの魅力から入ることで、「障がい者」というフィルターが外れ、ひとりの「人間・アーティスト」として関わるきっかけが生まれるとのこと。
(7)現場での配慮や場づくり
・作家へのリスペクト: 年齢に応じた大人としての扱いと、ひとりのアーティストとしての敬意(リスペクト)を持つことが不可欠。
・自由な表現空間: ワークショップでは結果や制限を求めず、親と適度な距離を保ちながら制作過程そのものを楽しめる環境づくり(何をやっても良い安心感)が潜在的な表現力を引き出すこと。
(8)アートを活用する上で気をつけていること(配慮や配慮事項)
・作家へのリスペクト(尊重)・障がいのある作家であっても、決して「子ども扱い」せず、ひとりの大人・アーティストとして敬意を持って接することが最重要であると強調されました。
・「障がい者が作ったから安くていい」という先入観を捨て、心を動かすアート作品として正当に評価することが求められます。
・適正な価格設定と価値の還元:福祉商品は経費や利益を差し引かず安価に販売されがちですが、原価計算を行い適正価格で販売・二次利用などの対価を還元することが、作家の生活や工賃支援につながると共有されました。
(9)地域に一歩踏み出す人が増えていくには何があるといい(つなぎ手の役割と場)
・活動者のネットワークとプラットフォーム(人材バンク)の整備:個人で活動するアーティストや団体・行政が直接つながりにくい課題を解消するため、文化・芸術活動を行う主体を集めたネットワーク会議やプラットフォームの構築が有効であると提案されました。
・応援・伴走する仕組み:市民や事業者が地域で活躍するアーティストを知り、市民みんなで応援・マッチングできる環境(プロによる伴走者支援を含む)を作っていくことが、新たな一歩を後押しします。
(10)潜在的な表現力を発揮できる場づくり(具体的取組)
・保護者と適度な距離を置く:ワークショップの際、子ども(参加者)と親を意図的に少し離し、ボランティアやディレクターが間に入ることで、過度な制限を感じずに自由に表現できる環境を作ります。
・「制作結果」ではなく「過程・空気」を楽しむ:完成度や作品の飾り方といった大人の都合・制限を設けず、「手が真っ黒になるまでやっていい」というプロセスの自由さを保障することが、子どもの潜在的な満足度や表 現力を引き出します。
・強制しない・見立て遊びなどの自由な素材活用:作ることを強制せず、地域の企業等から譲り受けた廃材などを自由に組み合わせて遊ぶ(ACFの「ラッコルタ創造素材ラボ」など)など、自然体で発想・手を動かせる企画が効果的です。
アートワークショップ&作品展示
午後からのシンポジウムに先立ち、午前中、NPO法人 アーティスト・コレクティヴ・フチュウさんと東京造形大学の石田恒平さんによるアートワークショップを開催し、市民の皆さまにアートを体験いただいた他、基調講演をお願いした社会福祉法人アール・ド・ヴィーヴルのアーティストの方、府中市の柴田将人さん、府中市文化生涯学習課の令和7年度のアート企画「共生社会にふれて、みる」の展示を、ホワイエにて開催しました。
アール・ド・ヴィーヴル作品
柴田将人さん作品
共生社会にふれて、みる
アートワークショップ1
アートワークショップ2
アンケート結果
(1)何でこのイベントを知りましたか?
・友人・知人 35% ・広報ふちゅう 17% ・館内チラシ&公共チラシ&学校チラシ 各11%
(2)イベント全体の満足度
・大変満足 35% ・満足 35% ・どちらともいえない 11%
(3) 基調講演の満足度
・大変良かった 48% ・良かった 38% ・どちらともいえない 4%
(4)パネルディス化ションの満足度
・大変良かった 55% ・良かった 31% ・どちらともいえない 10%
(5)参加者の主なコメント
・アートで繋がる社会をみんなで考えることが嬉しいし心が満たされた時間でした。
・障がい者のアート作品のアウトプットのアイデアを得ることができたから。
・子育ての話も含めて、障がい者が生き生きと生きられる場づくりをしている中での(実)体験話、ビジネス化している話など大変参考になりました。
・法人設立までの経緯が分かり参考になりました。・アートと福祉の連携、人の動機や事業化して社会の中に組み込んでいく過程が見えてよかったです。
・皆さんのそれぞれの活動を紹介いただき、どんなことが出来そうか模索する段階から参加させていただいた感覚がありました。アーティストバンクに登録したいです️。
・府中市の活動が良くわかりました。アートによって人々がつながっていくのはすばらしい!!府中美術館のコンセプトが「生活と美術」とは知りませんでした。
・障がいがある、ないに関わらず、生きる力となるような好きな事(今回はアート)をみつけられるかどうかという事が、自分らしく生きる上で重要だと感じました。
・発達に凸凹のあるお子さんに接する仕事をしているので、子ども達が生きる基盤となるような好きなことを見つけられ、その子が持っている力がどんどん育っていくように、かかわっていけたらな、と改めて感じました。
パネラー感想やコメント
〇柴田 まりさん(アール・ブリュット立川実行委員)
・有意義な意見交換に感謝を示すとともに、「継続することで 共生社会に近づく」という言葉を受け、今後もボランティア活動を続けていく決意を表明。・障害のある人もない人も一緒に大きな絵を描く取り組みや、工事中の市役所の仮囲い等を活用した作品展示など、府中市内での具体的なコラボ企画を提案。
〇廣瀬 健さん(株式会社まちづくり府中 タウンマネージャー)
・作家(アーティスト)に寄り添い、その魅力を正しく見つめるプロの「伴走者」の重要性を実感したと言及。
・市民の中にも存在するプロの力をつなぎ合わせながら、地域全体で共生社会を育んでいきたいと語った。
〇斎藤 麻美さん(府中市文化生涯学習課課長補佐)
・アートの力を活かして市内で何ができるかを継続して考えていきたいと強調。
・参加者みんなで一つの作品を作り上げて目的と達成感を共有するような体験型の取り組みを、市民や地域と一緒に実現したいという展望を伝えた。
〇萩原 美由紀さん(社会福祉法人 アール・ド・ヴィーヴル理事長/アドバイザー)
・小田原から参加した喜びと、提示した情報が府中の活動の参考になれば幸いであると伝えた。
・福祉事業所は地域に根差すものだからこそ、この場がきっかけとなり、将来的に府中にもアート活動の拠点や輪が広がる種まきになれば嬉しいと締めくくった。
全体のまとめ
〇会場からの反響と手応え
参加者から「福祉やまちづくりの分野で、アートを活かした企画をやってみたい」といった前向きなメッセージが寄せられ、地域で一歩を踏み出すきっかけとなる実りある成果を得た。
〇配慮・マインドの共有
障がいの有無に関わらず、作家をひとりのアーティストとして「リスペクト(尊重)」すること、作品への適正な対価の提供や、結果を求めず自由に描ける場の保証が重要であることが再確認された。
〇今後の展望
市行政としても、さまざまな文化活動を行う主体をつなぐネットワークの立ち上げやプラットフォーム(人材バンク)の整備などを通じ、アートを通じた豊かなまちづくりを推進していく姿勢が提示された。
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