【しごとバー府中レポート:日本仕事百貨を知らナイト】仕事を通じて、居場所をつくる
「地域&仕事」がテーマのトークイベント「しごとバー府中」。2025年9月26日は、「日本仕事百貨」を運営する株式会社シゴトヒト 代表取締役のナカムラケンタさんにご登壇いただきました。イベント後半はナカムラさんが各テーブルを回り、参加者の方々とさまざまな生き方・働き方について意見を交わしました。
場所と人をつなぐ求人サイト「日本仕事百貨」
大学では建築を学び、その後不動産会社に入社されたナカムラさん。当初から、居心地のよい場所づくりに関心があったといいます。そんな場所づくりへの関心が求人とつながり、18年前に「日本仕事百貨」が生まれました。
この日は昨年の人気の求人として、八海山にある日本酒メーカーの複合施設、湯島の木村硝子店、パワーポイントに特化したデザイン会社などを紹介されました。
他の求人サイトと一線を画すのは、仕事の大変なところもちゃんと紹介していること。「日本仕事百貨の最大の特徴は、仕事のいいところも大変なところも、ありのままを紹介していることです。よく『大変だと書くと応募者が来ないんじゃないか』と心配されますが、本当にその仕事をやりたい人にとっては、大変なことも実はそんなに大変じゃなかったり、むしろ求めていることだったりするんです」とナカムラさん。
「例えばある設計事務所は、設計以外に資金調達や不動産仲介、広報なども業務に含まれることがあります。確かに純粋に設計だけしたい人には向かないかもしれませんが、プロジェクトの全部に関われることを魅力に感じる人もいます。ですから、まずは正直にありのままを伝えることをとても大切にしています」
読み物としての面白さも大切にしています。日本仕事百貨の読者には転職や就職の予定がない方も多いそうですが、「全然転職するつもりはなかったけれど、読み物として面白いので読んでいるうちに、思わず応募してしまいました」という声も多いそうです。面白くて、毎日のように読んでいるうちに、人生が変わっていた。そんな方が多いことも、「日本仕事百貨」の場所としての魅力を物語っているのかもしれません。
本来の姿が見える選考「BIZIONARY」
最近の求人市場での変化について、「『いい人』を求める声が増えた」と感じているとナカムラさん。その背景には、テクノロジーの発達があるといいます。「たとえばAIでいろいろなことができてしまうようになると、何をやるか一緒に話し合って決めていくことが大切になるわけです。何ができるか、ではなく、何をしたいか。そうすると、コミュニケーションが大切になってきます。建設的に冷静に、一緒に話し合える人というのがすごく求められていると感じますね」
こうした企業側の声に応えるため、2018年から始めたのが「BIZIONARY(ビジョナリー)」というグループワーク型の選考会です。2日間のグループワークを通じて、その間の言動を記録・観察・分析するというもの。一人ひとりのコミュニケーションの姿勢がありありとわかるようです。
「書類選考や面接では、どうしてもその人の本来の姿が分かりにくい。2日間のグループワークを通じて、参加者のありのままの姿を企業の方に伝えるのがBIZIONARYの目的なんです」
実際に企業側も感覚的に採用することが減るため、お互いに入社後のギャップに悩むことが減ると言います。
参加者の方も最初は緊張するそうですが、すぐにグループワークに慣れ、普段のコミュニケーションが取れるようになっていく。実際にナカムラさんの会社の採用でもBIZIONARYを活用しています。
各テーブルで生まれた対話
イベントの後半では、ナカムラさんが各テーブルを回りながら参加者と対話する時間が設けられました。
清澄白河のリトルトーキョー3階にあるバー「あのひと」の1日店長制度についても話が飛び出しました。「まだドキドキしていてそこに踏み出せない」という方に対して、ナカムラさんが背中を押す場面もありました。
BIZIONARYで人を見るポイントについての質問には、「人の話をちゃんと聞いているか、感情があふれるかなど、いろんな項目を記録しています。2日間という長い時間なので、よくわかる」と具体的に説明。また、あるテーブルでは副業や複業の話題で盛り上がり、別のテーブルでは府中の歴史について話が弾むなど、多様な対話が生まれる時間となりました。
府中でも始まる、新しい働き方
イベントの締めくくりとして、ナカムラさんは府中での展開可能性について語りました。
「うちの3階のシェアキッチンみたいに、朝昼いろんな店長さんがいる場所を府中でもやれないかという相談をいただきましたが、もちろんできます。居抜きのカウンターの場所とかがあれば、すぐはじめられるかもしれません」
この言葉に、参加者から「私も一日店長やります」という声が即座に上がるなど、会場は大いに盛り上がりました。府中でも、清澄白河のような場所が生まれる日は、そう遠くないかもしれません。
ライティング:ステラ・ワークス 金子千鶴代


