安田 透さん、関 雅美さん(プラッツインターン 作成記事)
自由なテーマで、小学生が描いた絵画を募集・展示する活動を行っている『MOA美術館府中児童作品展実行委員会』。美術作品を制作する事の楽しさを伝え、子ども達の成長へ繋げる事を目的として活動を続けています。
今回は、団体の立ち上げ当初から関わっていらっしゃる、実行委員長の安田さんと事務局の関さんにお話を伺いました。
子ども達の絵で、人々に光を
Q.安田さんと関さんは「子どもの絵が持つ力」とは何だと思いますか?
子どもの絵は無垢で、見ている人を癒してくれる力があると感じます。また、絵に込められたエネルギーやメッセージは、見ている人を勇気づけます。
私たちが主催する作品展では、絵を募集する際にテーマを指定していないので、この様な『絵が持つ力』が引き出されるのだと思います。テーマに縛られて悩むのではなく、本当に描きたいものを自由な発想で表現してもらいたいのです。それぞれの絵には個性や味わいがあり、じっくり見ているとそれが分かるので面白いです。
Q. 病院や介護施設、地域カフェで開催している巡回展示ではどのような人が見に来ていますか?
病院では、子ども達の絵が職員の皆様や入院している方々の癒しとなって頂きたいという理由から巡回展示を始めました。
また介護施設では、入所している方々の毎日の生活が楽しくなる助けになると良いな、と思い、少しずつ開催場所を増やして展開してきました。ある女性の入所者が、飾ってある絵の中に『お孫さんが描いたすでにないご自宅の絵 』を見つけたそうです。「懐かしく、とても嬉しかった 」との言葉を頂き、私達もここで巡回展示をして本当に良かったと思いました。
病院や介護施設で巡回展示をご覧頂いた方には、アンケートのご協力をお願いしています。その時に頂いたご意見は、絵を返却する際に「こういう感想が届きましたよ」と子ども達にもお知らせしています。
「絵を見て元気になった」という意見を受け取った子ども達の中には、「もっと絵を描きたい」と創作意欲を高める子も多くいます。
そして、地域の人たちが集まり、コミュニケーションが自然と生まれる第3の居場所として注目されている地域カフェでも巡回展示をしています。 病院や介護施設と比較するとフランクな雰囲気が漂っています。あるカフェの利用者たちが子どもの描いたひまわりの絵をご覧になられて、「素晴らしい」「何と迫力あるひまわりだろうか」と観ている人同士で会話をされている様子が伺えました。巡回展示は、彼等が普段以上に会話が生まれるきっかけ作りとなると私たちは考えています。
Q.今後の目標を教えて下さい!
現在巡回展示をさせて頂いている場所の数は、この作品展が始まった当初と比較すると、少しずつ増えています。より多くの人が行き交う場所の展示を増やすという事が今後の私達の目標です。
MOA美術館児童作品展は府中市だけではなく全国各地に支部があります。
例を挙げるならば、大田区のMOA美術館児童作品展では、羽田空港の一角を借りて巡回展示をしています。日本人だけでなく外国人の目にも触れる場所ですよね。空港とまではいきませんが、より多くの方々が利用される施設で展示をしていきたいです。
インタビューを終えて
私は今回のインタビュー全体を通して、関さんの表情や話し方、話す内容等から魅力を感じました。そして、小学校で司書をしている時に着用されていて、インタビュー直前まで開催された未就学児向けのイベントの時から着用されていた「カラスのパン屋さん」のエプロンから親しみやすさを大切にしている人だと思いました。子どもたちの絵は見る人の癒しとなる事、そして、作品展を開く事が家族内や地域の人たちでのコミュニケーションに繋がる手段の1つである事をインタビューから学びました。
安田さんの魅力は、作品展を広い視野で捉えていらっしゃる事だと私は思いました。作品展の良い所や課題点を客観的に分析されていて、大切だと感じている事については熱を込めて語って下さいました。子どもの描く絵が持つ力の可能性を見出しているから、作品展の運営に熱意を持って取り組めるのではないかと感じました。
(2023年8月18日 取材・文:インターン 野呂 智史)