七里 隆子さん(プラッツインターン 作成記事)
今回は府中市内で子ども向けの人形劇を行っている“劇団すずっこ“から七里 隆子(しちり たかこ)さんにインタビューを受けていただきました。人形劇を通して笑顔を届けるために考えていることは何なのかお聞きしていきます。
楽しむ、楽しませるという思いが居場所になる
七里 隆子さん(劇団すずっこ代表)
―活動をはじめようと思ったきっかけは―
コロナ禍での経験が劇団を立ち上げるきっかけになりました。
元々、幼稚園の保護者だけが在籍できる人形劇サークルに参加しており、劇団すずっこのメンバーともそこで出会いました。以前から本の読み聞かせなどを行っていたので人形劇サークルでも子どもたちを喜ばせたいと考えていました。しかし、緊急事態宣言と重なり十分な活動ができないまま娘の卒園を迎え、何かやり残したような思いを抱えていました。
感染拡大防止のために出会いは少なくなり、マスクで顔が見えず表情が伝わらないことも課題だと感じていました。そんな状況でも子どもたちの成長は止まらないし、私たちも止まってばかりではいられない。そんな思いから劇団すずっこを立ち上げました。
―原動力やモチベーションとなっているものは―
見てくれた人が笑顔になってくれる瞬間がやはり嬉しいですね。私たちの劇を鑑賞してくれる方は未就学児が多いので素直でありのままの反応をされるんです、だから子どもたちがつまらないと感じたら最後まで見ないでどこかに行ってしまいます。そんな素直な子どもたちが相手だからこそ私たちが決めた内容やテーマでこちらを向いて、笑顔になってくれると本当にやりがいを感じます。子どもたちの反応が見たいから続けているのが一つあります。
もう一つの原動力は仲間たちと部活動のようなノリで楽しんで活動をしていることです。皆で作り上げて皆で何かをするという事が大人になると中々無いので。
でも私たちの中ではお互いが尊重し合って意見を出し合い、最終的に一つの劇になっていく。そういったことができるのは凄い関係だなと思います。
―人を楽しませるために考えていることは―
演じる自分たちだけが楽しいということにならないように、見ている側が面白いと感じてもらえるためのストーリーを工夫しています。
例えば今後「三匹の子豚」をやる事になっていて、そこでも笑顔になれるような劇を考えて作成しています。昔話は結構残酷な話が多くて「三匹の子豚」でも最後オオカミが死んでしまいます。劇を通して笑えるようなコメディー要素を考えたときにオオカミが死なない展開があってもいいのではないかとメンバー同士で話し合っていて。元の物語が伝えたい事を曲げるわけではないですが、見ている側が面白いと感じてもらうにはどうすればいいか物語の構想を熟考しながら検証しています。
ただ、受け取る側の解釈は自由だと思います。自分たちが考えていたことがそのまま伝わることもあるのですが、後から感想で自分たちが思ってもいなかった事を言ってくださる子もいて、それも私たち作る側からしたら面白いです。
―劇団すずっこを楽しんでもらえている理由―
劇を鑑賞しながら一緒にワイワイできるのが劇団すずっこの良いところだと思います。
普通の劇は静かにして鑑賞するイメージがありますが、私たちの劇では子どもたちも一緒に反応しながら見られるのが楽しんでもらえている理由です。
また、劇団としての活動を無理しすぎていないからというのもあります。自分たちが長く人形劇をできるように焦らず、できる範囲で頑張っているのが私たちの劇の面白さに繋がっています。
―最後に―
インタビューさせていただいた七里さん、ありがとうございました。
人形劇を通してワクワクを届けている七里さん、やりたい事を続けていくうえで自分自身も楽しむというのは大事な考え方なのではないかと感じました。自分たちがワクワクできる環境でこそ“面白い”は生まれるし、その取り組み自体も長く続いていきます。
また、今回のインタビューを通して市民活動がそれに関わる人全員にとっての居場所になるのではないかと考えるきっかけになりました。インタビューをする前のイメージだと、人形劇を見る側にとって、劇団すずっこは何度も訪れたくなる居場所だと思っていました。しかし、それだけではなく演者側である七里さんにとっても劇団すずっこという場所がかけがえのないものになっているという印象を受けました。そのような意味で関わる人全員にとっての居場所であると言えるのではないでしょうか。
(2024年8月31日 取材・文:インターン 川上 雄大)