奥住さんは、キッチンカーでのたこ焼き販売から始まり、現在では様々なスモールビジネスを経営されている方です。
会社員として働く経験を経て今の生き方を選択した奥住さん。
「何事も楽しもうとする気持ち」が生活をより豊かにする大切なものであることを、本インタビューで教えてくださいました。
ドラッグストア店員、そして保育士へ -覚悟-
大学を卒業し、市場の成長が期待されていたドラッグストアに就職しました。当時は組織の中で「偉くなる」ことを目標としており、4年目には最も大きな店舗の責任者に抜擢されました。
しかし、責任ある立場に対して自分が実力不足であると感じ、仕事を続ける中で心身の不調に陥ってしまいました。そのとき、これからの人生について初めて真剣に考え、「あと40年も同じように働くのか」と怖くなりましたね。
その後、元々興味があった保育の資格を取るため学校に通い、6年間保育士として働きました。
そのきっかけとしては、ドラッグストア店舗での万引き対応の経験です。
売り上げが多い店舗では万引きが多発していました。その中で、子どもが起こしてしまった万引きの対応をした際に「子ども自体ではなく親子関係に問題があるのでは」と思ったことが、保育士を目指したきっかけでした。
-これまでの生活をガラリと変えることになったと思うのですが、そのことに抵抗を感じることはありましたか?
保育士の学校に入ったとき、最初は自分よりも若い人が多く浮いてしまうだろうと考えていましたが、「これで生きていくぞ」と思うと覚悟が決まりましたね。
幸いにも友人に恵まれ、第2の青春時代とも言える楽しい学生生活を送ることができました。やはり人間を変える唯一のものは「覚悟」なのだと感じます。
事業を並行して進めることの大切さ、人とのつながり
-その後起業を決意し、まずは移動販売に取り掛かられたと伺っております。なぜ最初の事業が移動販売だったのでしょうか。
保育士時代の当時の給料では貯金ができず、起業しようと決意したもののあまりお金がありませんでした。そこで、借り入れもしながら現状の範囲で始められることがキッチンカーでの移動販売でした。
そのほかにも、いくつかの事業を並行して進めています(キッチンカー、水耕農業、移動販売、紹介業など)。大変ですが、これは敢えてそうしています。
そのきっかけは東日本大震災の発生でした。
当時は移動販売を始めて3年目ほどで調子も良かったのですが、震災の翌日から娯楽の自粛ムードが始まりました。キッチンカーは場を盛り上げる役割もあるため否応なしにその影響を受け、それが移動販売1本の体制を見直す契機となりました。会社では毎月給料が支払われますが、独立したらそれについても自分が責任を負うことになりますからね。
ソーシャルビジネスラボの活用
-生活基盤を安定させるために、敢えて複数の事業を並行して進めているのですね。
また、奥住さんはプラッツの「ソーシャルビジネスラボ」を利用されていたと伺っております。事業を運営していくなかで、ここをどのような目的で利用していたのでしょうか。
ソーシャルビジネスラボは1年ほど前から利用していました。
事業を進める中で人とのつながり・ネットワークの大切さを知りました。そこで、様々な人と関わることで新しい方向性を見つけたいと思い、登録をしました。
*府中市市民活動センタープラッツ「ソーシャルビジネスラボ」についての情報は、下記サイトをご確認ください!
http://www.fuchu-platz.jp/use/1001877/index.html
点と点が繋がり、想像の域を超えた未来へ
-新事業の立ち上げなども含め、物事を新しく始めるときに大切にしている心構えなどはありますか。
「なんでもおもしろがる」ことですね。
特に、新しいことを始めるときはいつでも大変ですが、続けていたら曲がりなりにもできるようになってくる点がおもしろいと感じるようになります。
それができると、例えばたこ焼きと水耕栽培のように一見関係ないようなことがらでも、それぞれの点と点がだんだんと繋がって関連することに気づくことができます。
思いもよらぬ法人化へ
「次にこれをやったらどうなるかな?」と未来を想像しては、想像の域を超えたことが起きることもまた、楽しいですね。
最近そのことを実感したのは、買い物支援事業を法人化したときです。
実は、元々買い物が困難な方向けの支援の事業はあまり利益が出ないと思っており、高齢者施設への訪問販売のみ行っていました。
しかし、あるとき「西東京市で様々な理由から買い物に行くことができない高齢者が多いため、移動販売をやってほしい」という強い依頼を受けました。
いざ始めてみると、他のところからも次々声がかかるようになり、関わる人も増えてきたことで活動自体も大きくなり、法人化するに至りました。このことは、当初からは想像もしていない出来事でしたね。
仕事を通じて人生を楽しむことができるように
これからの展望としては、まず法人化した事業を安定させることです。
事業内容としては起業や移動販売の支援、また販売場所の提供などを行っているのですが、そこでの目標は「辛い思いをして仕事をすることをなくす」ことです。
仕事が楽しければ人生の大半は楽しいですよね。だからこそ、仕事を楽しいものにすることで人生も豊かになるように、という想いを持って活動しています。
やりたいようにやってみよう!
-起業やスモールビジネスに興味を持っている方、また今の仕事について悩んでいる人やこれから仕事について考える若者に向けて何かアドバイスなどありましたら、お願いします。
そうですね、まずは人生計画をざっくりと立ててみましょう。そして、路頭に迷うことがなさそうであれば自分のやりたいことをやってみるべきだと思います。
今は副業が認められていることも多いので、まずは今の仕事の傍ら起業をしてみることもありですよね。
今の生活の良さとしては、1番は自分を思い切り表現できることです。
自分のやりたいことをすぐにでもやることができ、その反応を短時間で受けられることが楽しいです。
本気になって覚悟さえ決めれば、どういうことかうまいこと回りだします。
もちろん楽しいだけではありません。しかし、私は会社員時代に当時の生活から逃げ出し、その後覚悟を決めたからこそ今頑張ることができているのかもしれません。
とにかく、やりたいようにやってみてください。
インタビューを終えて
奥住さんのご経験やお考えをお聞きして強く感じたことは、「何事も楽しもうとする力」の大切さです。
新しく起業するときでも様々な事業を並行して行っているときでも、その中からいつでも楽しみを見出すことで人生の彩りとしていくこと、これは誰にでもできることではないと思います。
順当に進学して就職することがある程度良しとされている風潮もある中、”仕事を楽しいものにする”という発想はまだまだ社会において未成熟なのではないでしょうか。
私自身、まだ将来のビジョンについてはあまり見当がついていないのですが、「仕事も含めて人生を楽しむ」という視点で今後の生き方を考えていきます。
奥住さん、お忙しい中インタビューを受けてくださり、本当にありがとうございました!
(2023年5月4日 取材・文:インターン 佐藤奈央)