藤本 玄太さん(親子カフェ「kotocafe」オーナー)
乳幼児と一緒に、気兼ねなく外食したいなぁ…(おしゃれなカフェで…)。得意なことを活かしたイベントを開催したいなぁ…(どうやったらいいのか全然わからないけど…)。そんな小さな声に耳を傾けて、実現の場を作ってきた藤本さんにお話を伺いました。
ほっとする、夢が叶う、人がつながるカフェ
藤本 玄太さん
「kotocafe」は外国の子ども部屋をイメージしたインテリアの、おしゃれな親子カフェ。「子とカフェ」から「コトカフェ」と名付けたそうです。食事だけでなく、フォトスタジオとして寝相アートや家族写真の撮影、またイベントをしたい方へのスペースレンタルなどを行っています。
オーナーの藤本さんは保育士としての経験を活かした的確なアドバイスで、子育てに悩んでいるママや、何かを始めたいと思っているママを応援しています。
「笑顔のきっかけ」がたくさん生まれる場所、それが「kotocafe」です!
保育士としての出発
「高校生の時に、卒業したあと何をしたらいいかなと悩んでいました。特に進学もしたいと思っていなかったし、何ができるのかなあと考えていたら、担任から『保育士の資格を取るのはどう?』と勧められたんです。僕は5人きょうだいの一番上なんで、ひとまわり歳が違う弟を保育園に迎えに行ったりはしていたんですけど、自分の仕事にするって気持ちではなかったですからね。でもまあ他にやりたいことも思い浮かばないし、保育士のことを調べてみようかなって軽い気持ちで保育課のある学校を見学に行き、なかなか面白そうかもと思って入学しました。
勉強するうちにすごくハマっていきました。乳幼児の行動とか心理がちゃんと分析されていて、哲学も入ったりして、保育学って本当に面白いです。保育士、幼稚園教諭、ヘルパーなど人に関わることの資格をひと通り取りました」
卒業後は保育園で働いていらっしゃったんですか?
「そうですね、保育園に勤務しながら和光市の子育て支援センターに関わったり、保育士養成校の講師をしていました。休日には、もうひとりの男性保育士と2人で遊び歌のユニットを組んで、府中の森公園でゲリラライブをやったり」
ゲリラライブ! すごいですね。遊び歌というのは?
「歌いながら手遊びやゲームをするんです。かなり盛り上がりましたよ、『また来たいんだけど今度いつやるの?』『いやー、ゲリラだから言えないけど第3日曜日10時から!』とかね(笑)。3年半以上やりましたが、多くの方に集まっていただきました」
笑顔のつながりができるカフェ
保育園を退職したあと、2013年にkotocafeをオープンされたんですね。本当にいろいろなイベントをされてますよね。ママとベビーのヨガ、ベビーマッサージ、リトミック、家計や保険のセミナー、マルシェ、異業種交流会などなど…。
「一つのテーマだけでなく、コラボイベントもいいですよね。アンガーマネジメントとヨガのコラボ、面白いよね!とか。参加した人がもっとやりたい、物足りないって思った時に次のイベントの案内ができれば、次の集客につながりますし。
子育てをする上での、ちょっとした悩みをテーマにイベントを企画することもあります。たとえば美容師さんを呼んで、お子さんの髪のセルフカット相談会をしたことがあるんですよ。小さい子どもを美容院に連れていくのって大変だから、家でママが切っちゃおうって思いますよね。で、やってみると、とりあえず切ることはできるけど切りすぎちゃうとか、まっすぐにならないとか…。プロの美容師さんにコツを少し教えてもらうだけでも全然違います。ヘアカットを習いながら気持ちがほぐれてきて、他の悩みを打ち明けられることもあるでしょうし」
夜に歌声喫茶もされていますよね。それは何歳くらいの方が中心なんですか?
「60代がメインですかね。子育て世代ももちろんですけど、その世代の方にも来てもらえることがとても嬉しいです。夜にもスペースを使っていただきたいですし。歌声喫茶にいらっしゃる方と、子どもたちが一緒に楽しめることも計画したいです」
多世代が集まって交じりあう、そんな場所って素敵ですね。
「何気なく子育ての悩みが相談できる場所があることが大切だと思います。ふらっと立ち寄って気軽に話ができるような。
僕が関わっていた和光市の子育て支援センターは、一番の目的は虐待防止なんです。地区ごとのセンターで連携して、必要な情報は共有します。府中にも“たっち”や“しらとり”といった子ども家庭支援センターがありますよね。それに加えてプラッツのような公共施設や、kotocafeのような店や、ほかにもいろいろなところが連携できたらいいと思います。何か施設を作るんじゃなくて、いまあるところがもっとうまくつながっていく。横のつながりがたくさんある、そんな街ができたらすごいですよね」
「ワイワイ」の輪を広げたい
子育てに関する悩みを聞き、さまざまな職業の人たちや幅広い世代をつなぎ、府中を愛する人を増やしていく。まさにコミュニティビジネスを成功させていらっしゃいますね。
「AIやインターネットが発達して、人間じゃなくても、実際に顔を合わせなくてもできることがどんどん増えています。けれどだからこそ、人と会うことが大切なんだと思います。人が人の間で生きていく、それが『人間』ですよね。
kotocafeは人の好きな人が集まっているだけの、ただのカフェです。みんなが集まってワイワイしている、そのワイワイがビジネスになったり、悩みの解消につながったり、お友達ができることにつながっていく。そのワイワイの輪がどんどん広がればいい。それを一言で表すと、今は『コミュニティビジネス』って言葉になるのかもしれない。
でもね、僕はコミュニティビジネスって言葉はいらないと思っています。いらないようになりたいなって」
特別なことじゃなくて、当たり前のことになったらいいですよね。
「そうですね、『イクメン』とかも好きじゃないです。当たり前のことを偉そうに言うな!ってね(笑)」
季節のディスプレイが楽しいキッズスペース。ママが安心して講座に参加できる、託児付きの催しもあります。
みんながほっとできるカフェ「kotocafe」を拠点に、藤本さんは強い情熱と冷静な判断力で人と人をつないでいます。
(2018年11月5日 インタビュー)