表 伸一郎さん(プラッツインターン 作成記事)
「かんきょう塾ネット」は、幅広く環境について学ぶとともに環境学習の企画・推進を図り、環境に関心を持ち、環境にやさしい市民の拡大に寄与するという目的のもと、府中市とも協力しながら環境学習およびイベント展開を行っている団体です。この度は、副代表の表さんに環境学習の重要性や今後の役割、そして環境問題についての思いなどを伺いました。
学び、知り、様々な立場を考える
表 伸一郎さん(かんきょう塾ネット副代表)
活動を行っている背景
まず、環境学習の活動を行うようになったきっかけを教えていただけますか?
成り行きでというのが答えにはなりますが、根本としてはJICAで働いていた経験があると思います。私は30年近く隊員募集の仕事を行っていました。応募してくる様々な職種の人と話す機会があり、雑学といいますか、幅広い知見を得ることができたと感じています。また、青少年対策や村落開発など様々な分野の仕事に携わりましたが、その中の一つに環境教育がありました。そして、JICAを引退した後、周りの人々からの誘いもあり、かんきょう塾ネットの活動に参加して、環境教育に携わることになりました。
JICAで働く上で感じたことを教えていただけますか?
途上国の人々は日本に比べて、川で泳ぐなどの自然に触れる機会がそもそも多いと感じました。環境への配慮という点では途上国の人々の方が自然に身近な分日本よりも意識が高いと感じる部分もありました。
また、先進国が現地の人々のことを考えられていないと感じることが実際に多くありました。例えば、植林をして砂漠化を防止するというプロジェクトでは、先進国の人々は木をたくさん植えることを第一に考えていることがありました。しかし実際には木を植えるだけではなく、その林や森を維持していくことが重要です。そしてそのためには、植える木が果実の取れる木であるといった経済的価値があるなどのメリットが絶対に必要なのです。
環境問題についての思い
環境全体についての問題意識等教えていただけますか?
やはり途上国の人々のことをもっともっと考えていく必要はあると思います。環境問題解決の取り組みとして、CO2削減がありますが、先進国の立場、基準だけでプロジェクトを進めることはあってはならないと思います。途上国のことも考え、そして途上国も主体となって責任をもってプロジェクトを進めることができる仕組みが大切。日本の円借款といったやり方はこの点で評価できると思います。無償支援に比べて有償支援は与える側も受け取る側も責任をもって主体的にプロジェクトに取り組むことができるのです。
それと、自然をコントロールするのではなく自然と共に生きるという東洋的な考え方は大切にしたいと考えています。この点で日本の里山は参考になる部分が多くあると思っています。
では実際に現在どのような活動をなさっていますか?
環境問題について学ぶ、かんきょう塾講座を府中市と協力して行っています。かんきょう塾講座では、専門家からその専門分野について教えていただくことはもちろんですが、それだけでなく、幅広い視点を持つべきとの考えから、途上国経験をしてきた人たちから途上国での生活について教えていただくといった内容の講座も行っています。さらに、工場の見学に行ったり、里山の見学に行ったりと実際の現場を訪れることもしています。
また、環境といっても幅が広いので様々な分野について講座を開いていて、近年は人口爆発と食糧危機について特に注目しています。それと、親子かんきょう塾や葉っぱプリントといった、子どもたちが自然に触れ、環境について考えるきっかけを作る取り組みも行っています。
環境教育において今後何が大切だと考えていらっしゃいますか?
子どもたちに環境に興味を持ってもらい、環境についての知識を持ってもらうことがやはり最も重要だと思います。お年寄りだけが環境について詳しくても仕方ありませんから(笑)そのためには環境という言葉をとらえなおすことも大事になってくるかなと感じています。環境という言葉は意味が広く、子どもたちは具体的なイメージをもって理解することが難しいのが現状なのです。興味を持ってもらうには環境という分野を水、空気、動物などのように個別に考え、子どもたちに身近なイメージを持ってもらうことが大切です。また、子どもたちに直接自然に触れてもらうこともイメージを持つ一つのきっかけになると思います。しかし、子どもたちは地域の自然に触れ合う機会がほとんどないのが現状なので、そこは課題ですね。
インタビューを受けてくださる中で、表さんの環境問題に対する思いをとても強く感じました。こちらが一つ質問をすると、様々な観点からたくさん答えてくださり、時にはお話が止まらなくなるくらいでした。表さんは今までJICA等で様々な経験を積んできたからこそ、環境に対する思いは人一倍強く、そしてそれを環境教育やこの度のインタビューなどを通じて人に伝えていくことを大切になさっているのだなということを強く感じました。
また、環境への配慮について考える上でも、先進国の立場や専門家の立場など自分たち側の立場や常識だけで考えてはいけないということは改めて深く理解することができたと思います。
表さん、インタビューを受けてくださり本当にありがとうございました。
(2022年10月11日 取材、文:インターン 杉﨑 翼)