【しごとバー府中レポート:クラフトビールを楽しまナイト】クラフトビールで人とまちをつなぐ
「地域&仕事」がテーマのトークイベント「しごとバー府中」。2025年11月19日は府中初のブルワリー「THREE ARROWS BREWING」で開催。代表の伊澤守孝さん、ヘッドブルワーの宮﨑亮介さんに創業やビールづくり、今後の挑戦についてお話しいただきました。
店内はコンクリートの質感を活かした落ち着いた雰囲気で、存在感のある立派な鹿の角が印象的です。カウンターの向こうに目をやると、鹿の角をハンドルにしたタップが8つ並んでいます。静かな佇まいの中にも命の息づかいが感じられる空間です。
イベントは「幕開け」の名を冠した、府中で初めて醸造されたクラフトビール「OPEN GATE IPA」での乾杯でスタートしました。
二人の出会いから、THREE ARROWS BREWINGの創業まで
アパレル業界で働いてきた伊澤さんと、カーデザイナーの宮﨑さん。THREE ARROWS BREWINGは、ビール醸造とは無縁だった二人が立ち上げたブルワリーです。
伊澤さんがクラフトビールに傾倒したのは、会社員時代のオレゴン州ポートランドへの出張がきっかけです。帰国後もその熱は冷めず研究を続け、ビール造りを本格的に学べる「相澤塾」に入塾。そこで宮﨑さんに出会い、意気投合します。
2025年3月7日、THREE ARROWS BREWINGを開業しました。店舗のオープンに向けては、千葉県のブルワリーが味のチェックをしてくれたり、伊澤さんが所属する猟友会のメンバーや友人たちが内装や準備作業を手伝ってくれたりしたそうです。
「本当に地域の皆様に支えられてここまで来られました。コミュニティの力で生まれたブルワリーだと実感しています」と話す、伊澤さんの感慨深い表情が印象的でした。
クラフトビールをもっと身近なものに
THREE ARROWS BREWINGのTHREE ARROWS(3本の矢)は、伊澤さんと宮﨑さんの2人とサポーターを指しています。ミッションは「Unlock Craft Beer For Everyone(誰もが気軽に楽しめるクラフトビールを日常に)」です。
「歴史もあり、素晴らしい府中で、誰もが気軽に楽しめる”『開かれたビール文化”』を目指す。ビールを通じて人とまちをつなぐ、府中のハブとなるようなコミュニティをつくっていきたいです」
クラフトビールをもっと身近なものにしていきたいと伊澤さんは話します。より敷居の低いものにしたいという考えのもと、気軽に楽しみやすい価格に設定しているそうです。
夢を形にするために大切なのは「諦めないこと」。
「創業準備中は、夢だけでは進めないという現実との戦いを強く感じていました」と伊澤さん。
創業計画書の作成から資金の工面、開店場所探しなど、やるべきことは山ほどありました。一番大変だったのは酒造免許の取得だったそうです。
「一年半越しの念願の実現でした。行政書士にも頼らず、自分たちで必要な書類を全て作りました」と語る伊澤さん。2025年10月16日、府中市では久々となる酒造免許の交付を受けました。「諦めないでやりきることが大事」。苦難の末に免許を取得したエピソードに、会場からは自然に歓声と拍手が湧きました。
醸造所見学:ビールが生まれる現場へ
店舗に隣接する醸造所では、ヘッドブルワー宮﨑さんからビールの原料や造り方について話を伺いました。
ビールの3大原料は麦芽・ホップ・酵母です。醸造前の麦芽やホップを試食させていただくと、品種によって味が全く違うことに驚かされます。醸造手順を学ぶ中では、仕込みから20日ほど経った麦汁を試飲する特別な体験も。説明後も「ここからさらに味は変わるのか」など質問が飛び交い、参加者の関心の高さがうかがえました。
これからの挑戦
THREE ARROWS BREWINGは「ビール・環境・地域」を軸に、持続可能なクラフトビール文化の実現をビジョンとして掲げています。
ビールづくりでは「毎日飲みたくなるクラフトビール」を目指し、味わいの幅を広げること。環境面では、地元農家との連携や副産物のリユース、大学との共同研究による低環境負荷の醸造、ジビエ活用など、循環型の取り組みを実践。そして地域との関わりでは、イベントやビールフェスへの参加を通じて、府中に根ざしたブルワリーとしてまちとともに歩む姿勢がうかがえました。
イベントは温かな拍手とともに幕を閉じました。その拍手には、開店を祝う気持ちと、今後への応援の思いが込められていました。
イベント後も多くの参加者がビールを片手に交流を続け、初対面同士でも会話が弾んでいました。THREE ARROWS BREWINGが目指す「人とまちをつなぐ場所」への歩みは、既に始まっています。
ライティング:結粋堂 佐藤裕子
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