プラッツ情報紙kokoiko第37号2026.7.1
『天使のハーモニー』と称される、イングリッシュハンドベルの響き。
そのハンドベルの大きな特徴は、1つのベルが1つの音に対応していること。1人が数個のベルを担当し、みんなで1曲を演奏します。力を合わせて曲をつくりあげる喜びを、奏者それぞれが感じることのできる楽器なのです。
府中で活動を続けるイングリッシュハンドベルの団体「カリヨン」と「ノイ」の皆さんは、年齢も、音楽歴もさまざまです。楽譜をまったく読めない人も、他の楽器を長く経験した人も、一緒に練習を重ねます。
「クリスマスの印象が強いですが、七夕の時期も演奏の依頼が多いんですよ」と代表の五十嵐さん。
夜空にきらめく星々のような音色が重なり合うとき、そのハーモニーは大きな天の川となって、見上げる私たちを天上へと誘います。
連なる音色で 響きあうメロディー

カリヨンの皆さん
音色が結ぶつながり、その喜び

「カリヨン」「ノイ」代表 五十嵐 しのぶさん
「これはすごい…!」――あるコンサートで聴いたイングリッシュハンドベルの重厚で美しい音色に思わず心を奪われた五十嵐しのぶさん。音楽大学を卒業後、生活や子育てを優先してきましたが、ハンドベルとの出会いによってかつての学びの熱量が呼び起こされ、音楽と真剣に向き合う人生がまた新たに動きはじめたといいます。
現在、府中市内で2つのハンドベル団体「カリヨン」「ノイ」の代表をつとめる五十嵐さんに、ハンドベルの魅力と演奏活動を通して感じてきた想いについてうかがいました。
親しみやすさと奥深さをあわせ持つ楽器
日本では「ハンドベル」というと、中にバネとおもりがついた「ミュージックベル」や「カラーチャイム」といった簡易的なものをイメージされることが多いかもしれません。イングリッシュハンドベルは教会の鐘と同じ、銅を主成分とした金属でつくられていて、音の響きや重厚感がまったく違います。あまり知られていないですが、府中市は4オクターブのハンドベルを所有しているめずらしい自治体なんですよ。
構造的にただ振るだけでは音がでないので、練習が必要。そこに難しさと面白さがあります。演奏では楽譜を目で追って、自分の音のタイミングを判断し、脳からの指示を手に伝えて、正しい動きでしっかり振って……と、頭と体の両方を使います。最初はヘトヘトでも、慣れてくると自然にできるようになる。音を止めたあとも空間に余韻が広がり、音に包みこまれるような感覚には、思わず心が震えます。
ハンドベルというとクリスマスの印象が強いと思いますが、春夏秋冬、いろんなジャンルの曲を演奏できます。また、年齢を問わず誰でも楽しめるのも魅力で、中には親子や三世代で一緒に舞台に立っている方もいるんですよ。
待っていてくれる人へ届けるベルの音色
団体としての活動の中で、児童館や老人ホームから「ぜひ来てほしい」と声をかけていただき、その思いに応えたくて演奏を続けてきました。最近では福祉施設などに伺うこともあって、鈴やタンバリンを持ってもらい「一緒に鳴らしましょう」と声をかけると、始まる前からとても喜んでくれて。普段は感情を表に出しにくい方が、音楽に合わせて手を挙げてくれたり、思いきり喜びを表現してくれたりする瞬間に立ち会うと、「音楽の力ってすごいな」と実感します。言葉にならなくても、表情やしぐさで「楽しい」が伝わってきて、そんな姿に私たちも「ありがとうね」「来年も来るから待っててね」と返したりして。そのやりとりが何より嬉しくて、演奏する私たちにも励みになります。
コンサートホールでの演奏ももちろん魅力的で、目指していきたいところではあります。でも、そういった場所に足を運ぶことが難しい方々に音楽を届けることの意味を、ここ数年でより強く感じています。これからも賛同してくれる仲間と一緒に、必要としてくださる場所へ出向く活動を続けたい。どんな場であっても丁寧に良い演奏を届けていきたいですね。
やさしい入り口から、ひろがる音楽の世界

「ノイ」の皆さん
ハンドベル演奏は一人では成り立ちません。体格も腕の強さも違う人たちがそれぞれの役割を担いながら、手の動きや呼吸、イメージを合わせて、一人ではないのにあたかも「ひとり」で奏でているかのように音をつないでいきます。
難しいけれど、全員が心を合わせて音がぴたりと合ったときはため息がでるほどきれい。みんなで「今、良い演奏ができた!」と感じられたときの達成感は格別です。
ハンドベルは楽譜の中のたった1つの音を担当することからスタートできます。大人になってからでも、何か新しいことをはじめてみたい人でも、子育て中の心の拠りどころに気分転換でやりたいっていう人でもOK。「本番」の演奏に臨む特別な気持ち、みんなで心をひとつに合わせる楽しさも味わえて、さらに運動・脳トレにもなりますよ!
取材・文:kokoikoライター 伊藤 薫
――kokoikoライター 体験記――
イングリッシュハンドベルの練習に参加させていただきました。
机の上には10センチメートルの厚みのあるベル専用の赤いマットが敷かれ、その上に大きなハンドベルから順に丁寧に並べられていきます。持ち手であるハンドルを手前に向けると、「G4」のように音名とオクターブを示す記号が記されていました。
この日、私が担当したのは「C6」と「D6」のベル。白い手袋をお借りし、いよいよベルの前に立ちます。譜面台に置かれた楽譜には、あらかじめ体験用に自分の担当する音に丸印が付けられており、さらに各小節には番号が振られていて、演奏中に楽譜を見失ってもすぐに戻れるよう工夫されていました。
イングリッシュハンドベルは、17世紀のイギリスで教会のタワーベル演奏を練習するために作られた楽器だそうです。
教会の塔に吊り下げられた大きな鐘は、複数の奏者がロープを引いて鳴らしますが、その仕組みをもとに、手元で扱えるように考案されたのがこのハンドベルです。ベルの内部には「クラッパー」と呼ばれる振り子があり、前に振り出すことで金属部分に当たり、美しい音が響きます。
まずは基本の奏法である「リング」に挑戦しました。胸の前からベルを前方へ振り出し、円を描くように戻して胸に当てて音を止めます。一見簡単そうに見えますが、同じタイミングで音を出すことは思いのほか難しく、ついベルを下向きに振ってしまったり、音量が毎回ばらついてしまったりと、なかなか思うようにいきません。
そのほかにも、ベルの縁に親指を当てて響きを抑える「サムダンプ」、マレット(バチ)でベルを叩いて音を出す「マレット」、大きく振り下ろして長く響かせる「スウィング」など、さまざまな奏法を教えていただきました。
いよいよ全員で楽譜に合わせて演奏します。全音符や2分音符、休符を追いながら、左手でド、右手でレを演奏するのは想像以上に難しく、途中でリズムが分からなくなって楽譜を見失ってしまいました。隣の方に「6(小節番号)だよ」と小節を教えていただきながら、なんとか演奏についていきます。それでも、音がそろって和音として響いた瞬間の美しさは格別でした。
今回の体験では、自分の動きに精一杯で、周囲に目を向ける余裕はほとんどありませんでした。しかし体験後に演奏を聴かせていただいた際、先生から「全員が同じ高さで、同じ円を描くようにベルを振ることが大切」と教わりました。
その言葉を意識して見てみると、奏者の動きが美しく揃い、音のまとまりが一層際立って感じられました。ばらばらの音が一つに溶け合い、豊かなハーモニーが生まれる瞬間は、とても印象的でした。
イングリッシュハンドベルは、一人では完成しない楽器です。だからこそ、仲間と息を合わせ、音を重ねていくことで生まれる響きには、特別な魅力があります。今回の体験はその奥深さと楽しさを実感できる、心に残るひとときとなりました。
取材・文:kokoikoライター 駒ヶ嶺 久美
"kokoikoライター いちおし情報” 地域にひらかれた“みんなの食卓” 農工大「農食」がつくる新しい居場所

大きな窓からキャンパスの緑が見える、明るく開放的な店内
東京農工大学府中キャンパス内にある「農食(NOUSHOKU)
レストラン&ショップ」は、地域にもひらかれ、誰でも気軽に立ち寄れる場所です。店内は大きな窓から光が差し込み、明るく開放的な空間が広がります。木を基調としたやわらかな雰囲気の中で、外の緑を眺めながらゆったりと過ごせます。
店長の古森優風さんは、「食べるだけで、環境にちょっといいことができる場所にしたい」と穏やかに話します。コンセプトは「Farm to Table(畑から食卓へ)」。
大学の畑で育てられた無農薬野菜を使った季節のパスタや、食品ロスを活かした飼料で育てた豚肉のローストポーク丼がメニューに並びます。メニューは季節に合わせて変わり、その時々の味わいを楽しめるのも魅力です。食べるだけで地産地消や環境に貢献できる気軽さが、このレストランならではの特徴です。
また季節の野菜に牛乳やバナナを合わせた農場野菜ラテもあります。「私もすごく好きなんです」と笑う古森さん。
朝ごはんの代わりにもなるし、日常の中で不足しがちな野菜を手軽に補えるのが魅力だと話します。
「農食」は大学のキャンパス内にありながら、バス通りからすぐの立地で、アクセスしやすい場所です。飲食物の持ち込みも可能で、思い思いに過ごせるのも魅力です。実際に訪れる人は学生だけでなく、地域の方や親子連れなどさまざま。食事を楽しむ人、読書や作業をする人、それぞれが自分のペースで時間を過ごしています。
さらに、レストランで出た生ごみをミミズコンポストで堆肥化するなど、大学や企業と連携した資源循環の取り組みも行われています。
農工大の畑と地域の暮らしをゆるやかにつなぐ「農食」。
ふらっと立ち寄るだけで、日常が少し豊かになる——そんな“みんなの食卓”が、ここにあります。
取材・文:kokoikoライター M.Hayashi

店長・古森優風さん
お客さまとの距離の近さを大切にしています。

左:人気メニューのローストポーク丼と農場野菜ラテ
右:農工大農場で採れた野菜を紹介するレジ横の看板。イラスト入りで、季節の恵みが伝わります。
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プラnet | 府中市市民活動ポータル (fuchu-planet.jp)
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