プラッツ情報紙kokoiko第35号2026.1.1
年の瀬も押し迫る中、府中公園では「年末困りごと相談会」が行われます。
主催するのは「府中緊急派遣村」「府中緊急派遣村労働組合」「NPO法人フードバンク府中」。他にもさまざまな団体と連携し、生活すること・働くこと全般についての相談を受け付けています。
人生が順調なときも、そうでないときも。このまちには相談できる場所があり、あたたかく迎えてくれる人がいます。助けたり、助けられたりしあう大きな輪の中に私たちもいて、ともに今ここで暮らしているのです。
相談会では熱いお茶もふるまわれます。木枯らしの公園で手渡される一杯のお茶。そこに込められた想いは、新しい年にも受け継がれていきます。
ささえあう心で、つながる命

府中緊急派遣村の皆さん
信じられる人がいる━━そこから始まる生き直し

府中緊急派遣村 共同代表 松野哲二さん(左)・川名法男さん(右)
こころの声に耳を澄ませる━━寄り添うまなざしがこころを解く
派遣村の大きな活動のひとつに、府中で行われる年末の「困りごと相談会」があります。生活や労働、子育てや家庭の問題などを誰もが無料で相談できる場で、お茶や軽食が用意され、必要な人には食料や衣類、日用品を配布しています。
近年は、女性や家族連れ、外国籍の方からの相談も増えています。女性相談員や外国語対応ができる相談員、弁護士や行政書士などの専門家とも連携しています。
相談会に来る人の中には「困っていることはない。食べ物だけもらえればいい」と話す人もいますが松野さんは、「一週間は食料がもつかもしれません。でもその先は大丈夫ですか?よかったら少しお話を聴かせてくれませんか」と、声をかけることもあります。
その言葉をきっかけに、「実はパートで子どもをひとりで育てていて大変で…」と、胸の内を語ってくれる人もいるそうです。そこから、生活を根本的に立て直すための支援へとつながっていきます。
「ひとりではない」━━その思いが力になる
松野さんと川名さんは、かつては同じ会社に勤めていた同僚であり、志を同じくする50年来の仲間です。
松野さんは言います。
「くじけそうなときにはいつも『川名さんも頑張っているのだから、自分も諦めてはいけない』と自分を奮い立たせてきました。
また、もう一人の共同代表、高見俊司さんも欠かせない存在です。派遣村事務局での相談受付をはじめ、河原で暮らす方々への見守り支援や困窮家庭への食料提供をともに行い、さらに団体の会計を一手に担って活動の基盤を支えてくれています。
会社も、派遣村の活動も、ひとりでは続けられませんでした。
いつも助けてくれる仲間がそばにいてくれたからこそ、今も歩みを止めずにいられるのです」
「忘れる」という支え方━━寄り添いの先にある新たな人生
派遣村の支援は、相手の生活に寄り添うことから始まります。
川名さんは、河川敷で犬たちと暮らす男性を支援した際、初回の訪問で犬をけしかけられ逃げ帰ったこともあった、と笑います。
それでも1日、また1日と根気強く、掃除や片づけなどを手伝い続けるうちに、少しずつ心を開いてくれたそうです。男性は結核を患っていたため、川名さんは治療や住居探しにも奔走しました。そして10年近くたったころ、初めて「いろいろやってくれてありがとう」と言われた瞬間の喜びは今も忘れられないといいます。
「怒る人ってね、不安が強くて、誰かに気持ちをわかってほしいっていう隠された思いがあるんです」と川名さん。
松野さんは静かに続けます。
「僕らが手を引いたら、その人はたったひとりになってしまう。だから寄り添い続ける。自立して生活が落ち着いた方には、もうこちらから連絡は取りませんし、僕も名前を忘れるようにしている。派遣村に支援されたという過去を恥ずかしいと思う方もいますから、僕たちの存在が重荷になってはいけません。
でも、支援しても生活を立て直すことができず、連絡が取れなくなってしまった方のことは、今も忘れてはいません。どこでどうしているだろうか、苦労していないかと、いつも案じています」

寒空のなか多くの人が相談に訪れる、年末の「困りごと相談会」。活動を支えるのは、個人や団体から寄せられるあたたかな協力です。

おふたりは定年後まもなく活動を始めました。
人は人によって生かされる━━自分を、他人を信じる力
ある元植木職人の男性を支援したときのこと。
アルコール依存症を抱え、再発を繰り返して生活を立て直すことが難しく、行政の担当者は手を焼いていたといいます。
松野さんたちは諦めず、男性の住むアパートをたびたび訪れ、掃除や片付けなど身の回りのことを共に行い、時間を重ねていきました。本人は多くを語らなかったものの、お酒を次第にやめていったそうです。
あるとき、復興支援で訪れていた福島から除染した松や竹を持ち帰り、その男性に門松を作ってもらいました。完成した門松を再び福島へ届け、飾られた様子を写真で見せると、男性はとても喜んだといいます。
松野さんは語ります。
「きっと、関わっていくうちに『みんなに迷惑をかけたくない』っていう気持ちが生まれたんじゃないかなと思います。
人って、自分のことを認めて、大切に思ってくれる人がいると感じたときに、初めて『自分も誰かの役に立ちたい』と思えるんですよ。
そうやって、人とのつながりの中で『自分もこの社会にいていいんだな』と思えたときに人は変わることができる。人を変えるのは、説教ではなく、つながりを実感することなんです」
砂粒ひとつ分の思いをつなげる━━わたしたちにできること
「僕たちの活動は本当に、砂の一粒に過ぎないのかもしれない。無理なことはできないから、自分たちにできることをコツコツやるしかなかった。困っている人のことを『あなたの問題』ではなく『自分の問題』として考えられるかどうかが大切なんです。誰かに同じ形で続けてほしいとは思いません。その人なりの形で、できることをしてくれたらうれしい。砂粒ひとつ分の思いが積み重なれば、社会は少しずつでも変わっていくと信じています」
取材・文:kokoikoライター 亀谷 のりこ
府中緊急派遣村
https://fuchu-planet.jp/organizations/36
プラッツホームページには、2020年に取材した松野さんのインタビュー記事も掲載しています。
https://www.fuchu-platz.jp/topics/interview/1004899.html
まちに広がる あたたかいつながり━━フードバンク府中の取り組み

NPO法人フードバンク府中 理事長 照井丈夫さん
「まずは多くの方に活動を知ってもらいたい」
そう話すのは、府中市で食を通じた支え合いの活動を続ける「NPO法人フードバンク府中」理事長の照井丈夫さんです。
フードバンクとは、家庭や企業から食品の寄付を集め、必要としている人や福祉団体などに届ける活動をしている団体のこと。食べ物を無駄にせず、地域で支え合う“食のセーフティネット”です。
照井さんがこの活動に関わるきっかけは、定年退職後に家族の誘いで参加した子ども食堂での支援活動でした。 「その日どんな食材が届くかわからない。届いたものを見てから献立を決めている様子を見て、もう少し安定して食材を届けられる仕組みがあったらいいのにと思った」と振り返ります。
その思いが、共感する仲間たちとの出会いを経て2020年4月にフードバンク府中の設立へとつながりました。市民だからこそ素早く、柔軟に寄り添う━━そんな姿勢が活動の原点です。
現在の活動は、食品の寄付を集める「フードドライブ」と、支援を必要とする側に直接届ける「フードパントリー」が中心です。倉庫の管理や配布などは、仲間のボランティアたちが分担して支えています。
「みんなができることを自発的に行い、自然に助け合えるつながりができていくんです。それが私自身、活動を続ける原動力になっています」と照井さんは笑顔を見せます。
数年前、コロナ禍のさなかでは、仕送りやアルバイト収入が減ってしまった学生がフードパントリーを利用することが増えていました。現在は特に留学生の利用が多く、宗教上の理由で食材に制限がある人もいます。そうした一人ひとりに寄り添えるよう、食品の組み合わせにも工夫を重ねています。
公共施設などで見かけるフードバンク府中の食品回収ボックス。それはまちに広がる「あたたかいつながりの輪」の入り口でもあることを、あらためて実感しました。
取材・文:kokoikoライター M. Hayashi

プラッツで開催されたフードドライブの様子
※2026年1月31日、フードバンク府中主催のシンポジウム「食品ロスをなくし、必要とする人へ分かち合う地域をめざして」を開催します。
シンポジウムの詳細・今後のフードドライブの予定などは、フードバンク府中ホームページをご覧ください。
https://foodbank-fuchu.jimdofree.com/
"kokoikoライター いちおし情報” 気楽に楽しく♪ 車返西住宅(3街区)「キラクナスミカ」の取り組み
団地の広場で2か月に1度のペースで開催されるキッチンカーイベント。このイベントが2年前にスタートしたきっかけは、スタッフの一人が管理組合の理事会役員に「若い人にももっと活躍してほしい」と声をかけられたことでした。
「若い世代だからこそできる“楽しい場”をつくりたい」——そんな思いが原点にあります。
みんなが純粋に楽しめるものといえば「食」。団地の広場に、キッチンカーに来てもらって住民の方に楽しんでもらおう。同じ思いを持つ仲間が集まり、青年部サークル「キラクナスミカ」が発足しました。
来場者だけでなくキッチンカーの店主にも負担が少なく参加してもらえるよう、管理組合に協賛を依頼し、場所代を無料にする仕組みを整えました。
私自身も何度かランチを買いにこのイベントに訪れたことがあります。キッチンカーの列に並びながら自然と会話が生まれ、散歩がてらに犬を連れて行ったときには小さな子どもから年配の方まで、みんなが優しく声をかけてくれました。
そんな温かな交流がこの場所の魅力の一つです。
取材をした日はイベントが始まるころに小雨が降り出しましたが、傘を持たない来場者にスタッフの一人がさっと傘を差し出し、優しく声をかける姿が見られました。
人と人との距離がいつもより少し近く感じられる——そんな空気がここにはあります。
その名のとおり「キラクナスミカ」の原点は“気楽に、楽しみながら”。
「使命感を背負いすぎるといつか苦しくなる。だからこそ、集まれる人で、できる範囲で、無理をしないことを大切にしています」とスタッフの方は話します。
「美味しいものが食べられたら、それだけで十分。まだここに顔を出していない住民の方も、いつか来てくれるといいなと思っています」
その言葉には、“楽しむことを手放さず、無理をせずにこの場を育てていく”という穏やかな思いがにじんでいました。
取材・文:kokoikoライター 駒ヶ嶺 久美

6月開催時の様子。七夕飾りの下、たくさんの人で賑わっています。(左)
キラクナスミカの皆さん(右)
https://www.instagram.com/the_kirakuna_sumika/
今後の開催予定などはこちらをご覧ください。
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※詳細は市民活動ポータルサイト「プラnet」をご覧ください。
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プラnet | 府中市市民活動ポータル (fuchu-planet.jp)
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