プラッツ情報紙kokoiko第36号2026.4.1
小児病棟の一角にある茶色いドア。
脇には「ドナルド・マクドナルド・ファミリールーム 榊󠄀原記念病院」のプレートが掛けられています。
ここは、子どもの入院に付き添う家族のための場所。
ファミリールームと病院の連携はもちろんのこと、近隣に住む人たちがボランティアとして関わり、さまざまな企業が物品を提供し、個人からの寄付や募金でルームの運営は続けられています。
寄り添う家族がひと息つくことで、病気と向き合う子どもたちもどうか笑顔になりますように。たくさんの人たちのそんな想いが、この部屋には満ちています。
ようこそ、 ぬくもりが迎える この場所へ

<公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン>
病気の子どもとその家族のための滞在施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス」を全国12か所で運営(2026年2月現在)。
2023年12月、日本初の「ドナルド・マクドナルド・ファミリールーム」が榊󠄀󠄀󠄀󠄀󠄀原記念病院の小児病棟内に開設。
小児病棟の一角にある茶色いドア。
脇には「ドナルド・マクドナルド・ファミリールーム 榊󠄀原記念病院」のプレートが掛けられています。
ドアを開けて靴を脱ぎ、スリッパに履き替えて部屋の中に入ると、そこにはフカフカのクッションにゆったりしたソファ、自由に使えるマッサージチェア、小さなぬいぐるみ……。そしてスタッフの笑顔。
ここは、子どもの入院に付き添う家族のための場所。
部屋にある備品や食品、お菓子などはすべて寄付でまかなわれ、平日の正午にはボランティアが準備した食事を提供する「ミールプログラム」が行われます。
ファミリールームと病院の連携はもちろんのこと、近隣に住む人たちがボランティアとして関わり、さまざまな企業が物品を提供し、個人からの寄付や募金でルームの運営は続けられています。
寄り添う家族がひと息つくことで、病気と向き合う子どもたちもどうか笑顔になりますように。
たくさんの人たちのそんな想いが、この部屋には満ちています。
家族を支える「場」をつくる ─病棟のなかで、ひと息つける時間を─

ファミリールームマネージャー
近藤 二夫さん
榊󠄀原記念病院の小児病棟のなかにある「ドナルド・マクドナルド・ファミリールーム(以下、ファミリールーム)」は、入院中の子どもに付き添う家族のための「心と身体の休息場所」です。病気と向き合う子どもを支える日々のなかで、家族は昼夜を問わず、気を張り続けています。
ファミリールームは、そうした時間の合間にほんのひととき、自分の気持ちを整えるために用意されました。子どもから遠く離れることなく、必要なときにはすぐ病室へ戻れる。その「近さ」があるからこそ、家族は安心して立ち寄ることができます。
「ここで過ごしたご家族の表情が、少し和らぐことがあるんです。その安心感が、お子さんにも伝わっていく。私たちは、家族を中心としたケアを大切にしています」そう語るのは、マネージャーの近藤さんです。
できるときに、できることを
病棟のなかにありながら、ファミリールームは医療の場ではありません。運営を担っているのは、公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパンの専任スタッフです。病院との連携やルーム全体の管理、ボランティアの調整などを通して、家族が安心して過ごせる環境を整えています。
この場所の雰囲気を支えているのが、スタッフとともにかかわる地域の市民ボランティアの存在です。
ボランティアに求められていることは、「できるときに、できることを」という姿勢だけ。特別な資格や経験がなくても、それぞれの立場やペースで、かかわっています。
あるボランティアの一人は、介護を終えて時間が生まれ、ポストに入っていたチラシをきっかけに参加したといいます。「大したことはできないけれど、いつも『ここにいらっしゃるご家族に、何か困っていることはないかしら』という気持ちでいます。少しでもお役に立てることがあると、うれしいんです」
立ち止まれる時間をつくる
開設したばかりの頃は、利用者が立ち寄るのは、コーヒーやスープにお湯を注ぐための、ほんの数分ということが多かったそうです。「もう少し、ここでゆっくり過ごしてもらえたら」──そんな思いから始まったのが、“ミールプログラム”と呼ばれる、昼食の提供でした。寄付として届けられる食材やインスタントの食品を使い、スタッフが考えたメニューに沿って、ボランティアが準備から提供、後片付けまでを行います。
「わが子のためにと頑張るなかで、親御さんご自身がきちんと食べることは後回しになりやすい。誰かが用意してくれたものを、食器で食べる。それだけのことですが、その行為自体に意味があるのではないかと思っています」
炊き立てのご飯でつくるおむすびには、「お腹もこころも満たされる」という声が多く寄せられています。
食事の時間が加わったことで、この場所での過ごし方にも、変化がみられるようになりました。立ち寄るための場所から、立ち止まって過ごせる場所へ。そんな手ごたえが、日々の中で感じられています。

ミールプログラムの準備。彩りよく丁寧に盛り付けられます。

(上)多様な居場所: 誰かと話せる「ソファスペース」から、一人になれる「マッサージチェア個室」「搾乳室」まで、その時の気分で過ごし方を選べます 。
(下)つぶやきノート: 声に出せない想いを綴るノート。利用者同士が直接会わなくても、書かれた言葉を通じて励ましや共感が静かに広がっています 。
「患者の家族」である前に
「利用者の背景や病状について、私たちは知りません。医療の専門家でもありませんから、踏み込みすぎないことを大切にしています」そう話す近藤さんは、かかわり方について、こう続けます。
「その場の空気や、相手の様子を感じながら接する。そのくらいのほどよい距離感だからこそ、病院とは違う時間が流れるのだと思います」
ある利用者から届いた手紙には、こんな言葉がしたためられていました。
病院と家を往復するだけの毎日。社会とのつながりが途切れたように感じ、孤独を覚えていたとき、「今日は暑いですね」暗いのでお気をつけて」「搾乳中はお腹がすきますよね」そんなスタッフやボランティアのさりげない言葉に、人との温かいつながりを感じた──と。
近藤さんは、付き添う家族が「患者の家族」という役割から、ふと離れる瞬間そのものに意味があるのではないか、と考えています。
近すぎず、遠すぎず
ファミリールームの空間づくりにも、そうした考え方が反映されています。誰かと話をしたいときもあれば、ひとり静かに過ごしたいときもある。そのときどきの過ごし方を、自分で選べることが大切にされています。一人掛けのテーブルやマッサージチェア、個室の搾乳室兼化粧室は、ひとりになれる場所。
一方で、自然と人が集まり、言葉を交わしやすいソファスペースも設けられています。
利用者が自由に思いをつづることができる「つぶやきノート」も、そのひとつです。「なんでうちの子なんだろう…」そんな一言に、別の利用者からの励ましや共感の言葉が、そっと書き添えられていました。直接言葉を交わすのではなく、ノートを介して思いが行き交う。踏み込みすぎることなく、けれど確かに誰かの存在を感じられる、その心地よい距離感が、この部屋の空気をよく表しています。
近藤さんは、こう語ります。「近すぎず、遠すぎず。でもひとりではないと感じられる。ファミリールームは、そんな存在でありたいと思っています」
取材・文:kokoikoライター 亀谷 のりこ
ドナルド・マクドナルド・ファミリールーム 榊󠄀原記念病院
府中市朝日町3-16-1
公益財団法人榊󠄀原記念財団附属 榊󠄀原記念病院5階
電話:090-2932-2437(年中無休 9:00-21:00)
mail:sakakibara.fr@mail.dmhcj.or.jp
ファミリールームへの寄付・ボランティア募集については、公式ホームページ・Xをご覧ください。
公式ホームページ
https://www.dmhcj.or.jp/familyroom/
X
https://x.com/dmfr_sakakibara?s=21&t=VCKRGnqnqxlxpUCOvGbL-w
榊󠄀原記念病院院長に聞く ー診察や治療だけで終わらない医療をー

榊󠄀原記念病院院長
磯部 光章先生
榊󠄀原記念病院は、心臓などの循環器疾患を専門とする病院です。高度な専門医療を担う一方で、院長が大切にしているのは、診察や治療だけで終わらない医療のあり方です。
「病気は患者さん一人で向き合うものではありません。周囲の支えが必要です。病気が治るかどうかだけでなく、療養の過程や、その人を取り巻く生活も含めて、ご本人とご家族が納得できる医療を大切にしたいと考えています」
その思いを象徴する取り組みのひとつが、院内に設けられた「ドナルド・マクドナルド・ファミリールーム 榊󠄀原記念病院」です。病院としては、病棟内に場所を確保し、環境を整えることでこの取り組みを支えてきました。
院長は、ファミリールーム利用について「ご家族がお茶を飲み、ルームにいる人たちと言葉を交わすことで気持ちが落ち着くことがある。付き添う家族が心に余裕を取り戻すことで、患者さんへの向き合い方も変わり、結果として療養を支える一部になっていくのではないでしょうか」と話します。
またファミリールームの存在は、医療者の意識にも変化をもたらしました。「患者さんの病気だけでなく、その背景にも目を向けることも医療の一部だという考え方が、職員の間にも広がってきました」
榊󠄀原記念病院では、医療の役割を病棟内での診療にとどめず、病院の外へと広げる取り組みにも力を入れてきました。
そのひとつが、一般市民を対象とした予防啓発イベント「心臓を守る健康教室~料理・運動・お薬・親子~」です。2025年10月に開催したお料理教室ではオリーブオイルやハーブを活用した地中海料理をみんなで作り、味わいを楽しみながら自然に塩分を抑える工夫を紹介しました。減塩は心臓病予防の基本ですが、「薄味では続かない」「おいしく食べたい」という声も少なくありません。参加者からは「減塩でも満足できることがわかった」「家でも続けられそう」といった声が寄せられました。
病院に来る患者さんを診るだけでなく、このような取り組みを続けるのはどうしてなのでしょうか。院長はこう語ります。
「私たちはファミリールームの設置や市民向けの教室などを通して、治療中・治療後の患者さんやご家族の生活にも目を向けていきたいと考えているのです。治療が終わっても、患者さんはずっと薬を飲み続ける必要があったり、目には見えない疾患が残る場合もあります。そんなふうに病とともに生きる子どもや大人を、社会全体で温かく支えていただきたい。みなさんの少しの理解や気づきが、患者さん一人ひとりにとって大きな安心につながっていくのです」
取材・文:kokoikoライター M. Hayashi

磯部院長とファミリールームを運営する皆さん。さまざまな組織や立場の人たちが連携しています。
"kokoikoライター いちおし情報” 想いがつくる心地よい非日常 「cafe bond」
是政の一角に、まるでそこだけが風景画のような佇まいの素敵なカフェ「cafe bond」があります。
「人が集まって、色んな世代の人たちが行き交うような場所を地域につくりたい」そんな思いを抱いていたオーナーの中津久美子さん。人が集まり楽しそうにしている様子を見ているのが好きで、かつて多摩川で音楽イベントを主催したこともあるという中津さんには、この地で新しく何かをはじめるにあたり「この場所を訪れた人に喜んでほしい」という思いがあったそうです。
「“どうしたら来てくれた人が喜ぶだろう”と考えたときに浮かんだのが、非日常感を味わえるような空間と、家ではなかなか作れないような手の込んだ料理。そういうものってやっぱり心が躍るんじゃないかなと思ったんです。それならカフェがいいね、と」
自宅近くの大きな一軒家の物件にめぐりあったのは8年前のこと。建築部門の会社を興したご主人の力を借りて住宅を改装し、家族やスタッフと力を合わせて「カフェ」という新たな命を吹きこみました。
扉を開けてすぐに「きっとこの場所で過ごすひとときは素敵な時間になる」と直感してしまうような、穏やかな空気が流れる店内。ひとりでゆったり寛ぐ人も、数名でおしゃべりをしながらお茶を楽しむ人も、思い思いに日常からちょっと離れた自分時間を過ごしているように見えました。

cafe bondは「我が子のような存在」と中津さん。
支えながら自分も支えられ、ともに歩んできた大切な場所です。
おしゃれでナチュラルな雰囲気の内装も、非日常感を演出する上で意識したそうです。異国情緒の風合いが素敵な椅子たちは、家具作りの経歴も持つご主人がインドネシアの職人さんにデザインを持ち込んで作られた一点もの。自然素材と手仕事のあたたかみに加えて、ゆったりと寛げるように座面も広くしているなど、細やかな気配りが込められています。
さらにcafe bondはお客さんだけでなく、働くスタッフの人たちにも喜びをもたらしてくれる場所でもあります。「パティシエになりたかった」「カフェをやりたかった」そんな一度は諦めた夢を実現し、ある人にとっては「自分のお店をもつ」という次の夢の出発地にもなったそうです。「ハコがあればなんでもできちゃうんですよね。私はそれをつくっただけですから」と微笑む中津さん。でもそのハコこそが、たくさんの人の「こんな場所があったらいいな」を叶えている宝石箱。「誰かを喜ばせたい」という中津さんの想いは場所に、そして集う人々に、しっかりと浸透して、cafe bondのやさしく心地よい雰囲気をつくっているように感じられました。
取材を終えてお店を出ると、そこにはいつものまちの風景、見なれた緑色のバス。自分にとっての日常がまた動きだすのを感じながら、心にはカフェで過ごした幸せな余韻があたたかく残っていました。
取材・文:kokoikoライター 伊藤 薫

人と人をつなぎ、人と場所をつないだ
cafe bondの物語。そこには多くの夢や幸せ、未来への希望が詰まっていました。
cafe bond
府中市是政5-2-8
電話:070-4365-3564
営業時間:10:00-17:30(L.O.17:00)
定休日 : 水・日・祝日
HP https://bond528.jp/
Instagram @bond.koremasa528
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