府中市建築施設課(プラッツインターン 作成記事)
府中市総務管理部建築施設課が2022年9月23日に開催した「府中市の文化・スポーツ施設の将来の方向性を考える」ワークショップに参加させていただき、その後ご担当の、同課の奥主査よりお話を伺いました。府中の文化・スポーツ施設はこれからどうなっていくのでしょうか。
府中市の文化・スポーツ施設のこれから
ワークショップ
プラッツ学生インターン太田万里恵です。先日、府中市主催のワークショップに参加させていただきました!
テーマは「府中市の文化・スポーツ施設における、理想的な『将来の府中市』を実現する上での課題・解決方法の提案」です!
「文化・社会教育施設について」と、「スポーツ施設について」の班に分かれ、特定の建物についてでも、交通についてでも、議題を限定せずに参加者が話しやすい方向性で議論を進めます。私は「文化・社会教育施設について」の班に入り、府中市美術館について参加者の方と意見を交わしました。
最初に個人の意見をとにかくたくさん付箋に書き出し、それをホワイトボードに貼り、似ている意見を分類します。次に、議論を重ねつつ意見を統合してグループ全員で一つの新しい案にまとめ、全員に対して発表するという進行でした。
私は大学で建築を勉強しているのですが、いままでワークショップに参加したことがなく、初めての体験でした!
世代や職業がバラバラな4人で、府中市美術館をより魅力的にするには、というテーマを設定して議論したのですが、あっという間に時間が過ぎるほどたくさんの意見が飛び交い、議論することができました!
私たちの班では、「駅から美術館が離れているので、芸術劇場と美術館を結ぶ公園の一本道でマルシェを開く、彫刻作品を展示してみる」という道に対する提案と、「美術に対して興味がない人でも抵抗感がなくなるように、体験型・対話型の企画展を行ったり、地元の小中学生の展示などを貸し切りで行う」という企画に対する提案を出すことができました!
正直、たった4人で深く議論ができるのか、と最初は不安でしたが普段の生活がお互い全く違っていたため様々な視点からの意見が出ました。私は建築を学んでいるので美術館自体の設計に関しては提案が出せますが、今は府中に住んでいません。企画に関する案は現在住まれている方の意見が大変参考になりました!
「様々な参加者の意見やアイデアをもとに議論を重ね、まとめていくことで新しい案を作れる」ことが魅力のワークショップですが、日時・場所・参加者の確保、運営の方法、人数が多い場合は意見を表できない人が出ないように議論の仕方をあらかじめ決めておく、など準備も多く大変であるため市民の意見を調査する段階ではアンケート形式が採用されることの方が多い印象です。
それに対して府中市は人口26万人に対してアンケートだけではなく、今回のようにワークショップも開催しています。私は「府中市はアンケートだけではみえてこない市民の個人の意見も直接・積極的に聞く機会を設けているのではないか。多様性という言葉を最近よく聞くが、それに合う企画で、先進的な取り組みなのではないか」と思い、市が開催するまちづくりワークショップに対してさらに興味をもちました!
そこで、ワークショップを開催する意義や、きっかけをぜひ聞きたいと思い、府中市総務管理部建築施設課の奥主査にインタビューを行いました!
インタビュー
「府中市が近年頻繁にまちづくりワークショップを開催しているのはなぜでしょうか?」
府中市の文化・スポーツ施設は全体的に老朽化により建て替えや、大規模改修の時期に差し掛かっています。施設を新しく建て替えるのであれば、市民の方に積極的に使われる施設にしたいと考えています。積極的に使われる、稼働率が良い建物とは利用者である市民の方のニーズを反映することで出来上がると考えています。しかし、近年は今ある施設がつくられた時代と違い、少子高齢化やコロナなど状況が大きく変化しています。一般的なアンケートや統計データだけでは正確なニーズが把握できないので、市民の方に直接お話を伺う機会を設けています。
「少子高齢化の警鐘が盛んに鳴らされていたコロナ前は『バリアフリー』や『子どもを育てやすい環境』という言葉をよく聞きましたが、近年はコロナばかりが話題にあがり『個人スペースを増設する』『リモートワークに対応する施設』が特に話題に上がっているように思います。どちらも大事なニーズですよね。ほかにもさまざまなニーズがあるかと思います。
アンケートでも調査を行うことができそうですが、ワークショップを開催することでより面白い意見が聞こえてくる気がします。今回のワークショップに限らず、府中市側ではあまり予想していなかった意見などはありましたか?」
デジタル技術とアナログのハイブリッドの活用について、思いの外多くご意見が寄せられました。体育館の混み具合を知るツールをつかうことで、よりスムーズに予約・利用を行えるシステムを作る、美術館をバーチャル空間に落としこむ、などの意見が出ました。
小学生の意見ではマンション・商業施設と同じ敷地・建物に小学校を併設する、サッカーのゴールキーパーを機械にして全員がフィールドに出て交流する、など大人の考えではなかなか出てこない意見が出てきました。
「小学生でもデジタル技術に興味を持っているのは時代を感じますね・・・!コロナでインターネット環境が必須になり、他のワークショップの意見でもインターネットの整備を求める意見も多くみられます。いままでのワークショップなどが政策に影響を与えているケースなどはありますか?」
現在は調査を行っている状況ですが、職員にとっては大変刺激になっています。直接聞かなければ出てこない意見や、ワークショップ参加者の様々な意見を組み合わせて構成される案などもあるため、開催する度に新たな視点を得ることができていると思います。
また、改修や新しく建物を建てるにあたり、近年全国的に一つの建物に複数の機能が入っている「複合施設」が計画される傾向にあります。府中ではルミエール府中が市民会館・中央図書館の役割を担っており、生涯学習センターにもホールやスポーツ施設が併設されています。複合的な施設を計画するにあたり、建物自体の設計、運営をどのように行うかなどの構想をはじめ、インターネットを整備してほしいなどの設備のニーズもあり、調査の段階でも得られるものが多いです。市民の要求は思っている以上に多様化しています。また、コロナのように2、3年の期間のみ対応すればよいものもあれば、少子高齢化のように長期的に対応する必要があるものもあります。施設は建設・運営に多額の費用がかかり、何十年も使用するものなので、計画の前段階で様々な意見を集めておくことが重要であり、ワークショップ開催に意義を感じています。
市民の意見の収集に加えて、実際に現在運営されている施設の視察も行っています。小学校、中学校、保育所、高齢者施設、商業施設などが併設した複合施設を視察し、小中学校が複合的に設計されていることで中一ギャップ(小学校から中学校へ入学する際に、環境の変化に適応できず登校が困難な生徒が多くなる)の対策を行うなど、行政課題を解決しています。
「長いインタビューとなりましたが、お答えいただきありがとうございました!」
≪ワークショップ・インタビューを終えて≫
府中市総務管理部建築施設課の皆様、そして奥さん、ワークショップの参加とインタビューをお受けいただき、ありがとうございました。
初めてまちづくりのワークショップに参加して感じたことですが、普段生活していると、同世代の人や職場の人など限られた人としか関わる機会がありません。しかし、普段出会わない人と「まちづくり」という共通の話題で楽しく盛り上がり、それぞれの人が全く違う日常を同じ時間、同じまちで過ごしているという状況がとても新鮮でした。新しい視点が増えることで、日常を楽しむ物の見方が増えて良い経験になりました。
これからの公共施設は複数の機能を持ち、複合化していくことが予想されるのではないでしょうか。そして、現在はないような全く新しい機能を持つ施設が出てくるかもしれません。公共施設について計画を進めていく上で市民の意見が参考になっているということがインタビューでわかりました。また、市政に市民が直接意見を言える・聞ける場があるのは先進的だと思いました。私も、これからはもっと公共施設を利用したり、まちづくりに自分から関わっていきたいです!