塩飽隆典さん(Cafe開)
のどかな雰囲気が流れる多摩川のほとり、子どもたちが遊ぶ公園のすぐ近くに、このコミュニティカフェはある。
家を開放し、カフェにする。
「住み開き」を実践し、地域の方々の居場所を作っている塩飽さんに話を聞いた。
cafe開
塩飽隆典さん
のどかな雰囲気が流れる多摩川のほとり、
子どもたちが遊ぶ公園のすぐ近くに、このコミュニティカフェはある。
さわやかな風が吹く昼下がり、
「こんにちはー」という声とともに、近所の方たちが訪れ、コーヒーを一杯。
気持ちの良い光の差し込むテラスで、おしゃべりが始まり、楽しそうな笑い声がひびく。
家を開放し、カフェにする。
「住み開き」を実践し、地域の方々の居場所を作っている塩飽さんに話を聞いた。
きっかけ
最初は、勤務先が都心であったため、地域にかかわる機会がほとんどありませんでした。
私も妻も府中が地元ではないので、外に出て挨拶もなかなかできない。
そんな折、ひょんなことから自治会長を任されることになり、少しですが地域にかかわる機会を持ちました。
また、府中NPOボランティア活動センターが主催するファシリテーター養成講座に参加することになり、
そこで出会ったのが、「居場所と出番」という言葉でした
居場所と出番
今まで、居場所というと自分だけの場所というイメージがあったのですが、
講座では、コミュニティのみんなで一緒にいるところという意味で居場所という言葉を使っていました。
そして、それぞれの居場所となるためには、一人ひとりがその中で「出番」を持っていることが大切だと。
この言葉を聞いたときに、ストンと腑に落ちるものがあり、
自分たちにも何かできないか。そんなことを考え始めました。
小さく生んで大きく育てる
自治会長を務めているとき、地域の持っている課題に多く出会いました。
しかし、
問題自体は見えていても、どこから手を付けていいのかわからないということが多い印象を受けました。
そこで、最初から大風呂敷を広げるのではなく、
自分たちができる範囲のことを、自分たちができる範囲でやろうと考えました。
住み開き
そんな時に本を読んでいて出会ったのが、「住み開き」という言葉。
子どもが家を離れ、ちょうどスペースが空いたことも手伝い、自宅を開放することを思いつきました。
地域の方々が集える、「居場所」として自宅を使えないか。
しかし、ただ居場所といってもなかなか来づらい。
それならば、カフェとして開放することで、来てもらうきっかけにすればよいのではないかと考えました。
家を開くという意味を込めて、café開と名付け、現在営業をしています。
「開く」ということ
例えば、「この地域での孤独死を0にしたい」という声が自治会等で聞こえてきます。
しかし、見回りに行くにも、ノックして拒絶されてしまったら、もう取り付く島もない。
セキュリティの強化のために「閉める」方向に向かっている時代の中で、どうやったら、ドアを開けてもらえるだろうか。
そう考えたときに、まずはいろいろなものをオープンにすることが大事なのではないかと思いました。
家を開放して、何か楽しそうだなと思ってもらって、家から出てきてもらえればいいなと。
地域の中で、人々が自分の持っている力を開いていく。
その中で、出番が生まれ、居場所が生まれる。
こうして近くに住むもの同士でつながっていくことで、
道に誰もいない閑散とした”安全”な地域ではなく、
いつも誰か人がいて、
オープンにしていても何も起きないような、
本当に安全な地域にしていけたらいいなと思っています。
インタビュー:関谷昴
編集後記
日常を営む。
「こんにちはー。」
私がcafe開さんの中でインタビューをしている間にも、何人もの方が訪ねてきた。
「あらー、こんにちは」
いらっしゃいませの代わりに、塩飽夫妻はそう返す。
そこにあるのは、営業というよりもむしろ、「日常」であった。
最初は相手の顔がわからずできなかった挨拶も、
今ではこうして当たり前のようにされている。
こうした日常が、ちゃんと継続していくように、
お金が回る仕組みを作る。
大きなビジネスでも、いわゆるボランティアでもない、
「日常を営む」という新しい発想が、ここにはあるような気がする。
インタビュー・編集 関谷昴