プラッツ情報紙kokoiko第25号2023.7.1
障がいの有無や国籍、年齢、性別などに関係なく、違いを認め合い、共生する「インクルーシブ」な社会。実現するための仕掛けが今、まちのあちこちで動き出しています。
みんな で 遊ぶ×一緒 に はたらく
すべり台をすべり降りるときの、あのドキドキ。
車椅子の子も、そうじゃない子も、一緒に味わえたらいいのに。
一生懸命に育てた野菜で作った料理を、美味しい!とお客さんが食べてくれたときの、あの喜び。
働くことが辛い人も、そうじゃない人も、みんなが感じることができればいいのに。
体験したいのに、体験できない。そんな想いがなくなりますように。
「インクルーシブ」な社会を実現するための仕掛けが今、まちのあちこちで動き出しています。
同じ遊具を、それぞれの遊び方で -もり公園にじいろ広場-
鴨たちがのんびり過ごす池や噴水、見晴らしの良い丘…。
公園を訪れる人には、皆それぞれお気に入りの場所があることでしょう。
2年前のある日、新しい遊び場が生まれました。白い柵で囲われたスペースや今までとは見慣れない遊具もあります。いつもは通り過ぎるだけでしたが、立ち止まって看板を見てみると「だれでも・みんなで遊べる広場」と書いてあります。ここは一体どんな場所なのでしょうか?
(取材・文:市民ライター 亀谷 のりこ)
生まれ変わった広場
以前あった、木をたくさん使用した遊具広場が、東京都のダイバーシティ実現に向けた施策の一環で、障がいの有無や国籍などに関わらず、あらゆる子どもたちが一緒に遊べるように、ユニバーサルデザイン遊具を使った「もり公園にじいろ広場」(以下、広場)として生まれ変わりました。リニューアルにあたっては、障がいのある子どもを支援する団体などに、公園で遊ぶ時にどのような配慮が必要か、ヒアリングを行い、設計に活かしたそうです。また工事期間中には、地域の子どもたちに広場や遊具の名前を考えてもらい、投票で決まりました。
「一緒に並ぶこと」が当たり前の光景になるように
実際にどんな方が利用しているのか、府中の森公園サービスセンター長の赤澤淳子さんにお話を伺いました。「印象的だったのは、あるお母さんが『ブランコの列に車椅子の子どもと、そうではない子どもが一緒に並んでいる光景をみて胸がいっぱいになった』と話してくれたことです。これからはこの光景が当たり前にならなくてはいけないとハッとしました。
そのために、モニタリングやアンケート調査を行い、利用者の意見を聴きながら、より良い場所になるように努力を続けています。」
オープンな心でつながる広場
設計前のヒアリングで「安全に遊ばせるために囲いがあるといい」という市民の声があり、道路側の広場に柵が設置されたそうです。取材中、実際に柵の中に入ってみました。外から見た印象とは異なり、接する園路には自転車が走っていたりランニングをしている人がいたりして、少し目を離してしまうと子どもには危険がいっぱいです。中にある遊具は設置間隔が広く作られていてゆとりがあり、のんびり安心して過ごせるのだなということにも気がつきました。心にある柵を外し、オープンな気持ちで新たな交流が生まれる場所になるといいなと思いました。
遊びを通して「支え合い」を学ぶ
子どもは遊びの中で学び、育っていきます。一緒に遊ぶ仲間は、社会で共に生きる人たちでもあります。さまざまな背景の子どもたちが、同じ遊具を使って、それぞれの遊び方で遊び、時に交流しながら、同じ空間、同じ時間を過ごす。遊びを通して、相手の立場に立って想像し、感じることで、他者への理解が深まることがあります。「互いの違いを理解し合い、支え合いながら遊ぶ、インクルーシブな遊び場」を目指して作られたこの場所。どのように活かしていくかを決めるのは、利用する私たち一人ひとりの意識が大切なのだなと感じました。
どんな遊具があるの?
人気No.1!車椅子で一番上のデッキまで上がれて、介助の人と一緒に滑り台を滑ることができます。
チャイルドシート型は上半身をガードでき、安心して使えます。お皿型は寝たままでも、座っても乗り方は自由。
飛び跳ねたり、寝転んだり自由にみんなで遊べます。
【お問い合わせ】
東京都立府中の森公園 サービスセンター
〒183-0001 府中市浅間町1丁目3−1
042-364-8021
ソーシャルファームから生まれる「+」(プラス)の循環 -株式会社BTF-
ソーシャルファームとは、就労に困難を抱える人が必要なサポートを受けながら、他の従業員と共に働いている社会的企業のこと。インクルーシブ社会の実現に向け、東京都も認証制度を設けてその創設と活動を促進しています。
(取材・文:市民ライター 伊藤 薫)
「働く場所をつくる」という社会貢献
府中市四谷にある「428cafe+(よつやカフェ)」を運営する株式会社BTFも、都の認証を受けた事業所の一つです。「四谷で生まれ育った自分が家族から受け継いだこの場所で会社をやっていく。その意味を考えたとき、地域や社会に貢献できることをしたいと思いました」と話すのは、代表取締役の市川寿子さん。福祉の仕事に携わる母の影響もあり、さまざまな事情で仕事をしたくてもできない人がいることや、その中には福祉のサービスからもれてしまう人もいるということを身近に感じていた市川さんは、社労士から紹介されたソーシャルファーム事業に共感し、会社として取り組むことを決めました。
就労を支えるのは“周囲の理解
株式会社BTFには就労に困難を抱える方が4名在籍し、主に農場での仕事でカフェ事業を支えています。時には出勤が難しい日もありますが、市川さんはそれぞれの事情に配慮しながら「来られるとき来てもらえたら、ここにはいつでも仕事があるよ」というスタンスで見守っているそう。その日の人数によって農場の作業を調整し、柔軟に対応しています。そうした安心感から、安定して出勤できるようになったり「シフトを増やしたい」と声がかかったりと、働く人たちにも嬉しい変化がありました。
一方で就労が困難ではないスタッフには、会社の姿勢をきちんと説明して共有。「相手の状況を知ることで、伝え方も変わるし、気遣いも生まれる」という考えのもと、“みんなが理解している環境”を大事にしています。
理解の輪を広げ、より多くの雇用を
「(就労が難しかった方が)仕事に来てくれることが何よりも嬉しい」と話す市川さん。自身も出勤できない状況を経験して、“仕事に行くのが当たり前”ではない人のつらさ、安心できる場所や周囲のサポートの必要性を、より実感しました。少しでも雇用の枠を広げるため、今後は農場だけでなくジャム工房でも受け入れ体制を整えていきたいと考えています。
とはいえ、雇用を増やし続けるには事業を拡大していかなくてはなりません。「どんな人でも受け入れたい。でも、自分の会社だけでは限界がある」。そこで市川さんが考えているのが、当事者の立場からソーシャルファームを発信すること。「知ってもらう機会をつくるのは、認証をもらった事業所としての役割」という言葉には、市川さんの誠実な思いと使命感が表れていました。
働く喜びをすべての人に
「四谷という地域にとって+(プラス)になるように」との思いを込めて名付けられた428cafe+。いつしか働く人々にとっても、安心して仕事ができる場所、気づきや成長、事業への貢献……と、たくさんの「+」が巡る場所になりました。
仕事を通じて社会とつながる喜びは、人生をさらに輝かせてくれます。「すべての人が自分の役割で何かを、誰かを支える力になる」。“働く”という側面から見たインクルーシブ社会は、そんな姿をしているのではないでしょうか。
【お問い合わせ】
428cafe+
東京都府中市四谷2-41-3
TEL 042-306-8202
化粧品店で唯一“ブラインドメイク”のレッスンが受けられる -SAKURAYA FOR ME 府中店-
ブラインドメイクという言葉を聞いたことはありますか?
視覚障害者の方が自分でフルメイクをする方法です。ル・シーニュ2階のSAKURAYA FOR MEのスタッフ、化粧訓練士の資格をお持ちの田代和代さんが店舗でそのレッスンを行っており、ブラインドメイクレッスンを受けることができるのは、全国の化粧品店の中でもここだけです。
田代さんは府中の化粧品専門店に長年お務めですが、あるときブラインドメイクのことを知り、驚きと共に興味を持ち、資格を取得されました。
「ブラインドメイクは、鏡を見ずに両手を左右対称に動かして行います。繰り返しレッスンすることにより、毎日同じように仕上げることがゴールです。きれいになりたいと思う気持ちはどなたも同じはず。使い方のコツやノウハウをお伝えし、ご自身でメイクを楽しんでいただくことを目指しています。」とおっしゃる田代さん。
視覚障害者の方を対象に無料体験レッスンも行っています。
詳細はSAKURAYA FOR ME 府中店へ直接お問い合わせください。
化粧訓練士、ブラインドメイクについて、詳しくは一般社団法人日本ケアメイク協会のホームページをご覧ください。https://caremake.jp/
kokoiko25号アンケート&プレゼント
kokoiko25号のご感想、今後取り上げてほしいテーマについてアンケートにお答えください。アンケートに回答いただいた方の中から抽選で3名様に、
「SAKURAYA FOR ME 府中店クレドポーボーテ マスクエクレルシサン(シート状美白マスク)1枚」をプレゼントいたします。
応募方法
二次元コード、WEBからのご応募、または官製ハガキに感想をお書き添えのうえ、下記宛先までお送りください。
〒183-0023
東京都府中市宮町1-100ル・シーニュ5階
府中市市民活動センター プラッツ kokoiko係
応募締切:2023年7月31日
※当選の発表は商品の発送をもって代えさせていただきます。
kokoiko24号にお寄せいただいた「読者の声」を抜粋してご紹介します。
散漫な印象でテーマが見えなかった。
【編集部より】
ご意見ありがとうございます。テーマがはっきりと見えるように工夫していきます!またぜひ、ご意見をいただければ幸いです。
80歳目前のkokoiko読者です。
「想いがかたちに変わるとき」を読んで4人の若い皆様の夢を叶える挑戦がまぶしいように心に伝わりうれしくなりました。
24号は市民ライターの真摯な取材・文がプラッツ職員の想いと一体となって作っている様子が伝わり、読者にもつながります。これからも楽しみにしております。
【編集部より】
とても嬉しく、励みになります!市民の視点から、皆さんの想いをお届けできるように頑張ります。
(市民ライター 亀谷、伊藤)
団体登録しませんか?
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府中を拠点に、誰もが住みやすい地域や社会のために団体活動を展開している皆さまのご登録、お待ちしています。
プラnet | 府中市市民活動ポータル (fuchu-planet.jp)
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