プラッツ情報紙kokoiko第24号2023.4.1
夢がふくらむ日もあるけれど、
それを持ち続けたり、巡ってきたチャンスに飛び込んだりするのは、
難しくて勇気がいることですよね。
市民活動やソーシャルビジネスに取り組んでいる人たちの、
「始めたとき」の物語。
想いをこめて育てた花が、
ふわりと開いたその瞬間について、尋ねてみました。
想いが 「かたち」に 変わるとき
夢は手放さずに、でも固執し過ぎずに
小林 えみ さん
出版社「よはく舎」代表。
2021年、分倍河原駅前に「マルジナリア書店」をオープンし、店主として書店を営む傍ら、自身も編集や執筆に携わる。
ある日偶然訪れたきっかけに手を伸ばし、「自分の書店を開く」という夢を叶えた小林さん。当時を振り返るお話の中から見えてきたのは、小林さん流の"夢へのスタンバイ"でした。
出版の仕事をしながら「いずれ自分の書店を開けたらいいな」という思いはありましたが、「いつ頃に、この辺りに」というような確たるものではありませんでした。それが実現することになったのは、この場所との出会いがあったから。現在の店舗の場所がテナント募集されており、「ここなら書店ができる」と判断ができたため、開店しました。
周りの人からすると突然「書店を開く」と言い出したように思われるのですが、私は実現に繋がることを以前からずっとコツコツ積み重ねていました。「いつか自分で書店をやるならこうしたい」というビジョンを描き、具体的には書店や飲食業の運営や小売業の経営に関して勉強をするなど、自分にできることを続けてきていた。いざ「条件にあうテナントが見つかった」という機会が訪れたとき、「ここで書店をやろう」と即決できるくらいに、準備ができている状態だったのです。
夢は持ち続けることが大事です。でも「いつまでに、こうなっていなければ」と拘り過ぎると、夢を持つことがつらくなってしまいますよね。やれていないことだらけになって挫折してしまうかもしれませんし、高い目標だけを固定的に「〇年後に○○する。でも、まだここまでしかできてない」と考えてしまうと苦しいと思うのです。また逆に、目の前のことだけ見ていても「今やっていることは一体何のため?」となってしまいます。ふわりと遠くを見るように持ち続ける夢と、手の届くところにある小さな達成目標。その両方があると、夢に向かうことを続けやすいし、いざという機会があった時にその幸運を逃さないと思います。
たとえ小さな一歩でも、今日できることの積み重ねが夢への準備になります。いま、私は語学の勉強をしたり、ある分野の本を読んだり、またこれからのやりたいことへ向けて少しずつ準備をしています。それが本当に実現するかはわからないことですが、何かが生まれたり、繋がっていくと思いますね。
取材・文:市民ライター 伊藤 薫
怖がりながら挑戦し、生きる密度を上げる
櫻井 麻樹 さん (市民活動団体「千夜二夜」代表)
市民活動団体「千夜二夜」代表。俳優・演出家・コミュニケ―ション教育ファシリテーター・プラッツ登録講師として、「暮らしと芸術をつなぐ」をテーマに幅広いジャンルで活動している。
「新しいことには、怖がりながら挑戦します」と話す櫻井さん。俳優としての長いキャリアを活かして新しい世界にチャレンジを続けるその奥には、いったいどんな思いがひそんでいるのでしょうか?
コロナ禍で、俳優として人前に出る活動はストップせざるを得ない時期がありました。でもそれは僕にとって、本当にやりたいことを見つめ直す時間だったのかもしれません。これまで僕は「演劇的手法」で自分の心と身体をケアしてきましたが、これはコロナ禍で萎縮した人の心を開放するためにも役立つのではないかと思ったのです。この手法を広く知ってもらうための活動を始めようと心に決めました。
まずは地元である府中で、市民の方に向けて「表現ワークショップ」を開催することにしました。参加者自身の奥深くから生まれる表現を大切にして気持ちを解放し、幸せを感じることができる柔らかい心を手に入れられるといいな、と思ったのです。皆さんがのびのびと表現しているのを見て、閉塞感が漂うこの時期だからこそ、心のままに自分を表出することの大切さをあらためて実感しました。
そもそも僕が演劇を始めたのも、人前に立つことが苦手だったので、そのコンプレックスを克服するためだったんです。どんなことでも、新しいことを始める時は怖いですよね。ワクワクする人もいるでしょうが、僕は怖がってしまう人間です。だからもう、「怖くなる」ことを前提として挑戦しています。今、ダンサーオーディションを受けたり、外国に滞在して演劇作品を作るプロジェクトに応募したりしていますが、ダンスも英語も得意ではないので必死に勉強しています。なかなかしんどいですよ、若いダンサーの中で一人、うまく踊れない。その羞恥心や居心地の悪さたるや、ねえ。でも怖がりながらも新しいことに挑戦し、一生懸命に取り組むことが、生きる密度を上げるということかもしれません。
海外で活動することも、地元の府中で市民活動を始めることも、僕にとっては同じ「挑戦」です。うまくいかなかったり傷ついたりもしましたが、学んだこともたくさんあります。目指していた場所にたどり着かなかったとしても、その過程が大事なのだと思います。
取材・文:プラッツ職員 神名川 佳枝
興味の赴くままに、未来図のピースをあつめる
日比 秀乃花 さん
小さな体で営まれる生体反応に魅せられて、大学でダニの研究に取り組む傍ら、小学生向けの教育イベントを開催する団体「Pendemyふちゅう教育ラボ」の中核メンバーとして活躍。
新しい世界に興味を持ったら、まずは飛び込んでみるという日比さん。さまざまな経験を重ねるたびに、若葉のようにぐんぐん成長されています。人との出会いの中で、折々に感じたことをお話しくださいました。
教育について興味があったので、大学入学後すぐに、中高生の居場所づくりをしている団体に参加して、子どもたちの勉強をみたり、進路の相談にのっていました。その中で、まちづくりや人のつながりに意識が向くようになり、「人と人とをつなげるお手伝いをしたい」と思ってプラッツでのインターンに応募しました。
ここではSDGsをテーマに団体同士が交流する場をつくる企画を立案し、イベントを開催するという大きな経験をしました。印象的だったのは、参加団体さんとの最初の打ち合わせの時のことです。職員さんたちへの相談の仕方がわからず、モヤモヤを抱えたまま穴だらけの企画書を打ち合わせの時に提出してしまいました。その時、参加団体さんから「こんなレベルで企画書を出していいのか」とお叱りを受け、「わからないことをわからないままにしている自分」を客観的に見つめることができました。そこからは積極的に相談できるようになり、無事に開催することができました。企画から開催までという流れは大変でもありましたが、終わってみるととても楽しくて、この経験を活かしたいと思うようになりました。
ちょうどインターンが終わるころに、小学生向けの教育団体で運営スタッフを募集していることを知って、迷わず参加しました。毎月のイベント開催に向けて、仲間とたくさんのアイデアを試行錯誤する時間がとても楽しくて、今は私にとって居心地のよい大切な場所になっています。
学校での勉強だけではなく、学校外での活動も全て将来につながっていると思います。
明確に目標を決めて進んでいく、というよりは、興味のあることをあれこれしているという感じです。そのおかげで多くの人との出会いがあり、さまざまな学びを得て、経験を積むことができています。そうするうちにいつの間にか未来図のピースが集まり、将来への道が見えてくるのではないかなと思っています。
取材・文:市民ライター 亀谷 のりこ
毎日頑張って生きている、そんな自分を認めていく
宮﨑 佳世子 さん
女性がん体験者とそのご家族のための、心と身体を癒すヨガや対話、講演などの乳がん啓発活動に取り組む市民団体『ピアサポートふちゅうなでしこおしゃべりサロン』代表。
宮﨑さんはご自身の「乳がん経験」を、同じ思いを持つ人への心と身体へのケアや啓発活動という使命に変えて活動されています。
なでしこの花言葉そのままに、純粋でひたむきな思いで取り組まれています。
40代の時に乳がんと診断され、手術のために入院している時、これまでの自分の生き方を振り返って、あと何年ぐらい生きられるのか考えていました。お医者さんや看護師さんたちに助けてもらった命で何かできることはないか、という思いが芽生えました。
抗がん剤の副作用の影響がなくなって日常生活を取り戻してから、乳がんに関する専門的な知識を学べる講座を受講しました。受講中、乳がんを経験した人たちがお互いに支え合う会を作りたいと思うようになりました。というのも私自身が参加した患者会で「頑張って、私たちも乗り越えてきたから、大丈夫よ」と励ましてもらった経験がありました。その時に「励ますだけではなく、同じ経験をした人同士だからこそ分かり合える、つらい気持ちを共感しあったり、症状への具体的な対処方法について教えあうような会があったらいいのに」という思いが生まれたことがきっかけでした。また、がん検診や正確な知識を学ぶことの重要性にも気づかされ、啓発活動にも取り組んでいきたいとも思いました。いろいろな準備をして、診断を受けてから5年後にようやく会を立ち上げました。
現在取り組んでいる活動の一つに、子育て中のお母さんたちに向けて乳がん啓発活動の一環として自己触診の方法をお伝えしています。
母親は自分よりも子どものことを優先させてしまいがちです。私も胸のしこりに気がついていたのに、自分の子どもの受験が重なったので受診を先延ばししてしまったことがありました。その経験を踏まえて、「何かおかしいな」と思ったら早く受診することの大切さを伝えています。
2人に1人はがんになる時代。病気がある、ないに関わらず「今自分に何かできることはな いか」を考えながら生活していく方が実りのある人生につながっていくのではないかと思っています。毎日頑張って「生きている」から今がある。そんな自分を認めてあげることが大切かなと思っています。
取材・文:市民ライター 亀谷 のりこ
「FuchuにはUchuがある」 プラネタリウムで、府中から宇宙へ行こう!
府中市郷土の森博物館プラネタリウム
郷土の森博物館の中にあるプラネタリウムは、より本物に近い星空の再現にこだわった最新式。光学式投映機に、多彩なデジタル映像を組み合わせることができます。子どもから大人まで多世代が楽しめるよう、季節ごとにさまざまなプログラムが用意されています。ゆったりと満天の星に包まれてみませんか?
kokoiko24号アンケート&プレゼント
kokoiko24号のご感想、今後取り上げてほしいテーマについてアンケートにお答えください。アンケートに回答いただいた方の中から抽選で2名様に、「府中市郷土の森博物館プラネタリウムペアチケット(有効期限2023年8月31日まで)」をプレゼントいたします。
応募方法
二次元コード、WEBからのご応募、または官製ハガキに感想をお書き添えのうえ、下記宛先までお送りください。
〒183-0023
東京都府中市宮町1-100ル・シーニュ5階
府中市市民活動センター プラッツ kokoiko係
応募締切:2023年4月30日
当選の発表は商品の発送をもって代えさせていただきます。
kokoiko23号にお寄せいただいた「読者の声」を抜粋してご紹介します。
読者の声
- 多摩川は近所なので時々散歩コースにもなります。以前サケの放流をしていました。その頃はまだ多摩川にもガマやクレソンなどありましたが、今は護岸工事のせいもあり、ほとんど何もなくなってしまいました。また復活させたいです。
- 川を中心に、さまざまな取り組みが端的にまとまっていてとても参考になりました。
- 川にテーマを絞っていて興味深く読みました。山崎さんの記事、伝統文化の継承と環境問題の解決を掛け合わせた商品、素敵な取り組みですね!ぜひどんどん普及していただきたいです。
編集部より
地元産業である織物を活かして布巾を作り、それが環境を守ることへつながる山崎菜央さんの取り組み、とても素晴らしいですよね。みんながちょっとずつ気をつけることで、サケやアユが泳ぐ元気な多摩川を未来へ残すことができるのかもしれません。
たくさんの「読者の声」をお送りいただきまして、どうもありがとうございました。
kokoiko市民ライター
プラッツ主催「市民ライター養成講座」修了生が、今号からkokoikoの編集に参加しています。
大好きな森や山でのんびり過ごしながらふと、この恵まれた環境はいつから、そして誰が育んでくれているのだろう?と知りたくなりました。取材を通して、その歴史や「人の想い」を知ると、見慣れた風景が彩られていくような感覚を覚えました。これからも活動されている皆さんの想いを大切に、言葉に紡いで伝えていきたいです。
亀谷 のりこ
どんな人にも、物にも、場所にも、活動にも、“今”に至るまでのストーリーがきっとあるはずです。そうした物語にスポットライトを当て、文章にするという形で応援ができたら素敵だなと思っています。
そんな執筆活動を目指す、猫好きの府中市民です。
伊藤 薫
団体登録しませんか?
プラッツに市民活動団体登録をすると、団体活動スペースの予約利用や印刷室、各種貸出機材の活用、さらにWebやSNS等での情報発信、各種イベントへの出展など、活動を広げるチャンスがたくさんあります。
府中を拠点に、誰もが住みやすい地域や社会のために団体活動を展開している皆さまのご登録、お待ちしています。
詳細は市民活動ポータルサイト「プラnet」をご覧ください。
プラnet | 府中市市民活動ポータル (fuchu-planet.jp)
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