「貧困のない、誰もがいきいきと生きられる社会を目指して」セミナー・交流会 開催レポート
12月19日(土)の午後、「貧困のない、誰もがいきいきと生きられる社会を目指して」と題して、セミナー・リレートーク・交流会を開催しました。会場参加者25名、またYoutubeでも視聴いただきました。前半は、国内外の貧困削減に取り組んでいるグラミン日本の百野さんから、後半は活動団体の方からお話を頂き、その後交流会を開催しました。
日本の貧困の現状とは?
一般社団法人グラミン日本の百野公裕さん
お話の中で現在の日本の貧困の状況を具体的に示していただきました。日本の相対的貧困は世界のトップクラスで、6人に1人が貧困と言われています。しかし、貧困の定義が共有されておらず、本当に困っている貧困層が外からは見えにくい現状があります。そのためグラミン日本ではこの辺りのコンセンサスをとっているとのことでした。
また、特に深刻な母子世帯の貧困が継承されてしまうことや、困窮者の孤立により支援策を知る機会がない、助けを求められない状況にアプローチしにくいことが課題とのことで、その点に関して日本は行政による困窮者生活支援のしくみがあります。
しかしグラミンとしても行政がすでに行っている貧困対策に対して対策をとっていく理由としては、公助には限界があるためという考えがあるとのことです。ハローワークが例に挙げられ、企業と働きたい希望の方のマッチング機会は提供されていますが、本当に必要な点は、企業が求める人材のスキルアップ機会の創出や、マッチング後の定着率が重要だということでした。
現在のグラミン日本が解決策として実施している内容は、孤立しないよう互助グループを形成する、金融・起業に関する教育機会の創出、就業支援、無担保低金利融資などがあります。
支援を行う側としての課題では、関係団体間の連携や社会的弱者に寄り添う企業がまだまだ足りていないという現状もあるとのことでした。そのような中でこれからのグラミン日本の提供価値としては、ソーシャルビジネスの協創、インクルージョン&ダイバーシティ促進、企業などへのSDGs対応ブランド強化支援の3つの貧困支援を促進していくそうです。
グラミン日本のスローガン、「早く行きたいならひとりで行け、遠くにいきたいのならみんなで行こう」大きな課題に向かってみんなで課題解決に向かって頑張っていきたい、というアフリカのことわざで締めくくられました。
多様な立場にある貧困の現状と、それに対応する団体の活動
続くリレートークでは、3団体からお話をお聞きしました。
フードバンク八王子の川久保美紀子さん
まだ食べられる食べ物を、食べ物に困っている人へつなげる、フードロス解消と困窮者支援を目的とする活動を行っています。月二回のフードパントリーでは利用者が社会で孤立しないよう話をすることを大事にしているそうです。
また、八王子食堂ネットワークでは、子ども食堂や学習支援、居場所づくりをしている施設、フードバンクといった地域で活動する団体が連携するために、隔月1回かならず情報共有、情報交換をする場を設けてつながりを創出しています。子ども食堂19カ所、学習支援4か所、居場所1か所、フードバンクは3か所がネットワークとして繋がっているそうです。
府中緊急派遣村の松野哲二さん
多摩地域でフリーダイヤルを使っていつでもだれでもつながる活動をしています。設立から11年、自分たちの手の届く範囲での活動を行っていると話されました。なお11年間活動を続けてきた中で、手が届く範囲だけでも480名の相談を受付けて、その内、路上からアパート入居された方は351人にもなります。
直近では、「コロナ困りごと相談会」を多摩地域で開催してきており、7名の弁護士がボランティアで相談にのっています。
コロナ禍において非正規雇用の45%もの人が雇止めといった危機にさらされているといわれており、このような環境の中、路上生活者へつらくあたり石を投げるような対応をとるのではなく、ともに生きていこうという意識をもって、貧困の連鎖から人権の連鎖へつなげるように団体として継続的に活動をしているところだという報告がされました。
また最近はカリタスジャパンの援助を受けて、活動の需要が高まったために事務所を大きくしたそうです。
アフターケア相談所ゆずりはの高橋亜美さん
「ゆずりは」は児童養護施設や自立援助ホームを巣立った方々を対象とした無料の相談所です。「虐待」と「貧困」とは隣り合わせであるといいます。虐待されていて施設に入所したある女の子、その女の子が施設に入って最も嬉しかったことは何だったか?温かい食べ物でも、叩かれないことでも、お風呂に入ることでもなく、「靴下を履けたこと」。
生きていくのに必要なものや資金だけがあればよいということではない、人の手で、もう安心だよと言葉をかけながら、ガサガサの足にクリームを塗り、そっとやさしく靴下をはかせてあげたこと、それがその子に最も助けになったことだったのです。
支援策自体も大切ですが、その仲介の際に心から寄り添うことが大切ですと、活動で大切にされていることについて話しをして頂きました。
その後、グループに分かれて参加者各自が日頃やっている活動や、今日の感想などを分かち合う交流タイムを持ちました。「経験の貧困をなくす」「支援される側が支援する側にまわること」など、大切だと思うことが次々に飛び出していました。
当日の模様は、YouTubeでご覧いただけます。下記URLからご覧下さい。